先月東京で開かれたヘルスフードエキスポでは、今年初めて機能性表示食品を集めたエリアが設けられた。アベノミクスの規制緩和をきっかけに始められた機能性表示食品制度は、届け出さえすれば国の審査なく企業の責任で機能性の食品を可能として食品産業の活性化を図った。制度の設計に関わった森下氏は、制度には自らが必要なものを買えるという消費者のメリットにつなげる狙いもあったと話した。機能性表示食品の届け出の9割以上では機能性に関する論文を集め科学的根拠を評価した「研究レビュー」が使われている。コストのかかる臨床試験などを自社で行うことなく届け出を進めることができる。機能性表示食品の開発に取り組んでいたブレンド茶メーカー精茶百年本舗では、製品の完成が近づきパッケージをデザインしていた矢先に紅麹サプリの問題が発覚した。社長は簡単に取れるのも企業にとってはメリットがあるが、逆にそれがリスクになる可能性があると今回の事件で感じたと話した。取引先とともに自主的な試験などを行い、安全性を確認することにした。納得できない限りは届け出を見送る考えだという。コンサルタントの勝田氏は、行き過ぎた表示や広告を懸念していた。東京農業大学の上岡教授の研究では2022年に届け出があった研究レビューから無作為に40件を抽出し、16項目について国際的なガイドラインの基準と照らし合わせて検証した。すると信頼性が「極めて低い」とされた研究データが40件中38件にのぼった。医師の染小氏は表示の根拠とされる論文や使い方にも問題があると指摘した。染小医師が所属するグループが発表した研究では32の論文を調査した。そのうち少なくとも8件で結果が誇張され広告などに使われていた。日本健康・栄養食品協会は「届け出の科学的根拠の質の向上や広告表示で誤認を与えないための助言に引き続き取り組んで参ります」などとしている。