大阪医科薬科大学の河野さんは「今まで外科の診療体制は医師の自己犠牲的な長時間労働によって支えられてきた。なんとか患者を救いたいという気持ちで奮闘してきたが、昨今医師不足が進みその影響もあり限界に近づいていると思う。これは危機的なことで、持続可能な医療を今後考えていかないといけないと思う。」、東京財団政策研究所の渋谷さんは「地域によって異なる状況はあると思うが、こうした状況は今後も増えていくと思っている。」などと述べた。島根県済生会江津総合病院では2022年末から外科医師の退職が相次ぎ医師確保の見通しが立たずに外科が閉鎖した。さらにこの病院の脳神経外科では1人のみだった常勤医師が退職し、非常勤医師の体制になり週1回の外来診療のみになった。いま手術が必要な疾患の受け入れはできない状況になっている。江津病院の担当者は「医師不足に加え医師の高齢化も進んでおり、地域の医療ニーズに応えることが困難になっている。近隣の病院との連携に努めているが、他の病院も医師不足で医師派遣が難しい状況。」と話す。河野さんは「地方ではより深刻な状況だと思う。特に若い先生は女性だけでなく男性も労働環境の厳しい科を選択しない。例えば新しく外科のプログラムを専攻した医師は各都道府県別に数が出ているが、5名以下が46都道府県中13もある。中には0人という県もある。10名以下になると半数以上が該当し、ここに地方も含まれている厳しい状況になっている。」、渋谷さんは「そもそも国が医師数の上限を決めていて、外科医など医師の養成は基本的には大学や医局がバラバラにやっていてミスマッチは起こりやすい状況。」などと述べた。全体の外科医数の移り変わりを見ると、2002年:2万3868人、医師全体に占める割合:9.6%だったが、2022年は1万2775人、3.9%まで低下し、人数も20年で約1万人減少している。河野さんによると減少の理由としては勤務時間が長い、他の科に比べ一人前になるまで時間がかかる、給与が勤務量に見合っていない、医療訴訟のリスクが高いことがあげられるという。