ハンセン病をテーマにした紙芝居を朗読するのは藤崎美智子さん。ハンセン病を患ったことはないが、元患者である夫の存在が活動の原点となっている。3年前、80歳で亡くなった夫・陸安さんは幼いころにハンセン病を発症し、長年療養所での生活を余儀なくされてきた。陸安さんは療養所の食堂で働いていた美智子さんと出会い74歳で結婚した。陸安さんが生前こだわり続けたのは“つらい過去も隠さずに語り伝える”ことだった。亡くなる前の年、地域の会合で陸安さんは当時、患者が子どもを持つことは許されず、子どもを作れないようにする手術を受けたことを明かした。陸安さんは若い頃、患者どうしで結婚し妻は子どもを授かったがおろさざるを得なかった。その後、再び子どもができないよう手術を受け入れるしかなかった陸安さん。同じように多くの患者が子どもを持つ権利を奪われた。この悲しみを繰り返してほしくない、若い世代に伝えたいとしてきた陸安さんの意志を美智子さんが引き継いだ。知り合いの作家や画家などに呼びかけ、去年紙芝居を完成させた。この日は約120人の中学生を前に紙芝居を披露した。主人公は患者夫婦のもとに宿ったまだ生まれていない子ども。紙芝居では生まれることができなかった子の思いも綴られている。あらゆる差別の中でも陸安さんが最も許せなかったという「命」の差別が紙芝居を通して伝えられた。先月には紙芝居をもとにした絵本も出版された。
