2004年11月5日、日本初の歌声合成ソフト「MEIKO」が発売された。ボーカルとアンドロイドを組み合わせボーカロイドと名付けられた。しかし反響は小さかなった。「MEIKO」は1500本。「KAITO」は500本。音楽雑誌からは3歳時のようなたどたどしい歌声と酷評された。4人しかいなかったチーム2人に縮小された。落ち込む剣持に新美幸二は「細くても続けなさい」と声をかけた。剣持は何が足りないのかあらゆるジャンルを聞いた。若い女性歌手を聞いてる時、息と声が渾然一体になってることに気づいた。息の成分を残したまま言葉を繋げられないか、システムを1から作り直し始めた。その頃、伊藤もどうしたらソフトをもっと使ってもらえるか悩んでいた。ある日、売上を見ていた伊藤は、3年前に発売した「MEIKO」がもう一度売れ始めていたことに気づいた。理由はあるサイトにあった。個人が自由に動画を投稿できるサイト。ボーカロイドにアニメやヒット曲を歌わせる動画が次々と投稿されていた。しかもその歌声について1人の歌手のことのように語り合っていた。伊藤は同人文化を再度確認。どんな歌を歌わせようかとワクワクできるキャラクター像が必要だと、アイデアを社内で話すと、食いついてきたのが入社2年目の佐々木渉だった。佐々木はここに参加すれば自分が知らない音に出会えるかもしれないと手をあげた。まずは手を付けたのが声。佐々木は300人の声優から凛とした声を選んだ。さらにパッケージのデザイン。あえてアンドロイドである雰囲気を出すため、未来から来た少女を作り出した。2007年4月、声を収録。半年後、ついに声が立ち上がった。名前は初音ミク。未来から来た初めての音という思いを込めた。