にんげんだものなどの作品で知られる書家で詩人の相田みつをは栃木県足利市の出身。ことしで生誕100年を迎えたことをきっかけに相田のさまざまな功績を多くの人に伝えていこうという取り組みが地元で動きだしている。相田みつをは後に自身の代表作となる作品を晩年の60歳になる年に発表した。その後は温かみのあることばを生かした独自のスタイルを確立。67歳で亡くなるまで多くの人の共感を呼ぶ作品を次々と世に残した。ふるさとの足利市では連日、多くの人が展示会に訪れ相田のことばに心を寄せている。一方、相田が若いころの創作活動で苦しんでいたことはあまり知られていない。足利市内でそば店を営む中川知彦さんは幼いころから生前の相田と深いつきあいがあった。中川さんは今、相田が38歳のときに譲り受けた作品を店内に飾っている。書体は荒々しく詩の内容も晩年とはかけ離れている。みずからのスタイルを探してもがいていたころの心情が当時の雅号に表れていた。「貧乏不安、貪不安」と書かれており、書家として認められず看板やパッケージのデザインなどで生計を立てていたという若い日の相田。苦しい時期の経験が晩年につながっていることを多くの人に知ってほしいと中川さんは考えている。相田の功績を後世に引き継ごうとする取り組みは市内の小学校でも始まっている。山辺小学校の教諭の山岸哲也さんは地元が生んだ詩人を子どもたちに知ってもらう特別授業を考えた。きっかけは同じ学校の教諭だった祖父の存在。このときPTA会長の相田と親交があったことを祖父から聞いていた。教室では子どもたちに相田の作品を見て感じたことを発表してもらった。授業の最後には自分たちが住んでいるまちから相田の作品が生まれたことを誇りに感じてほしいと語りかけた。苦しい時代を乗り越え人々の心に響く作品を届け続けた相田みつを、生誕100年をきっかけにその足跡を見つめ直す動きがふるさとの足利市から広がろうとしている。相田みつをの生誕100年を記念した展示会は足利市立美術館など市内の4か所の施設で来月1日まで開かれている。