13年前の3月19日、東日本大震災の直後に発売された人気漫画雑誌の映像を紹介。表紙のあちこちが破れたような跡が見える。地震のあと、仙台市内の書店に置かれたこの一冊は、ボロボロになるまでたくさんの子どもたちに読まれ、笑顔と安らぎを与えた「伝説のジャンプ」とも呼ばれている。この漫画雑誌が読まれた場所として話題となった仙台市内の書店が今月いっぱいで店を閉じることになった。仙台市青葉区にある、まちの書店。親子2代で営業してきたが、今月末での閉店を決めた。店主の塩川祐一さんは、震災後に怖がる子どもたちに楽しみを与えたいという地域の人からの声に応え、地震の発生から3日後に営業を再開した。避難生活をしていた人を含め、娯楽がほとんどない生活が続く中、本の力を再認識した。13年前、店頭に貼られた塩川さん手作りのポスターには「少年ジャンプ、読めます!」。手に入れた貴重な一冊の漫画雑誌を店頭に置くと、子どもたちが次々と楽しんだ。この漫画雑誌は入荷したものではなく、被災地への配送が止まる中、客の1人が読み終わったあとの1冊を譲り受け、特別に多くの子どもたちに読んでもらおうと考えた。当時、店頭で漫画雑誌を読んだ子どもの1人、千葉恒太郎さん。被災後、家に籠もり呆然と過ごすしかなかったときに、手にした漫画雑誌のことを鮮明に覚えているという。その後、塩川さんは被災後の子どもたちに希望と勇気を与えたとして、出版業界の団体から感謝状が贈られた。このエピソードは、中学3年生の道徳の教科書にも掲載されている。子どもたちは立ち読みをする代わりに、募金をするという提案をした。1回読むと20円というルールが定められ、合計4万円余りが集まった。塩川さんは、そのお金を津波を受けた地域に本を届けるプロジェクトに寄付した。1冊の漫画雑誌がもたらしたささやかな奇跡だった。被災しながらも店を再開し、子どもたちに希望を与えたまちの書店。電子書籍の普及などが続く中で、惜しまれながら閉店する。