谷崎は暮らしの中の美や食文化についても描写しており、日本の厠は精神が休まるようにできている、ある程度の薄暗さと清潔であること、静かさが必須の条件などと考察している。ロバート・キャンベルは、用を足している間に感じる気配が忘れられている、行って帰って来る時間も時の陰影と書かれていると話した。安藤は40年ほど前に設計した住宅のトイレは奥の部屋にあり、雨風をあたる中庭を通る設計になっていた。安藤は不便で使いにくくても心に残る精神的な豊かさがあればいいと話した。谷崎は漆器や蒔絵の美しさはろうそくの光でないとわからないと説いている。長谷川等伯の金屏風を和ろうそくの明かりで照らした映像を伝えた。