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日本人の感性や女性美を小説や随筆で表現した谷崎潤一郎は、たびたびノーベル文学賞の候補にもなった。昭和10年に単行本「攝陽随筆」に収められた「陰翳礼讃」は海外でも約20の言語に翻訳され、日本文化を読み解く名著として評価されている。37歳で関東大震災に遭遇し関西に移住した谷崎は日本の伝統文化に目覚め、10年後に陰翳礼讃を執筆した。ロバート・キャンベルは、谷崎は関西に移住したことをきっかけに近代に失われようとしていた日本独自の感覚や思想に入れ込んでいった、陰翳礼讃は光を影の二項対立でなく境目の先にある闇を感じることで魅力的なブラックホールに吸い込まれる感じがすると話した。
陰翳礼讃は現代の建築家にも影響を与えている。若い頃に陰翳礼讃を読んだという安藤忠雄は、自然とともに生きるのが日本の美意識で暗さも明るさも両方なければいけない、明るくて天井の高い近代建築には心の宿る場所がない、住まいは精神が住むところで精神の豊かさは陰影にあると話した。谷崎は床の間の美しさを、土壁や掛け軸との調和にあると説いている。円山応挙「驟雨江村図」の掛け軸をかけた床の間を自然光のみで撮影した映像を伝えた。20代後半で陰翳礼讃と出会った現代美術家の大竹伸朗は、特に床の間の陰影の美しさを描写した部分に共感したという。
谷崎は暮らしの中の美や食文化についても描写しており、日本の厠は精神が休まるようにできている、ある程度の薄暗さと清潔であること、静かさが必須の条件などと考察している。ロバート・キャンベルは、用を足している間に感じる気配が忘れられている、行って帰って来る時間も時の陰影と書かれていると話した。安藤は40年ほど前に設計した住宅のトイレは奥の部屋にあり、雨風をあたる中庭を通る設計になっていた。安藤は不便で使いにくくても心に残る精神的な豊かさがあればいいと話した。谷崎は漆器や蒔絵の美しさはろうそくの光でないとわからないと説いている。長谷川等伯の金屏風を和ろうそくの明かりで照らした映像を伝えた。
大竹伸朗は兼六園で見つけた石橋に惹かれ、油絵を描いた。手前がこの世で渡ると浄土の世界といういわれがあると知ったという。大竹は陰翳礼讃も闇が鎮座する床の間の世界を表している、日本では死は禁句のような風潮があるがあの世とこの世は普遍的なものだから読み継がれると話した。ロバート・キャンベルは、想像力を掻き立てる本で歳月を超えて私達に問いかけてくると話した。安藤は陰翳礼讃は昔の話だけども今の話、美意識は永遠と話した。
エンディング映像。
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