東京の落語では、主に前座、二ツ目、真打ちと階級が上がっていくが、入門から16年、自分らしい落語を貫き、先月「真打ち昇進」という夢をかなえた女性落語家・雲龍亭雨花さんを追った。江戸時代から伝わる古典落語に、雨花さん独特の現代風アレンジを加える。さらには自作のフリップ。江戸庶民の暮らしを描いている。落語は難しいというお客さんの声を受け、知識や想像を手助けする。家に帰ると、1人の主婦。日々、忙しく走り回る。幼いころから落語にのめり込んでいった雨花さん。夢は「いつか落語家になりたい」。周りの反対もあり、一度はほかの道に進むが諦めきれず、27歳のときに門をたたく。そのとき、3歳の息子がいるシングルマザーだった。子育てをしながらの前座修行。前例にない挑戦だった。息子を保育園やベビーシッターに預け、朝から深夜まで落語に打ち込む生活。周囲から「そんなのだと困りますよ」「里子に出したほうがいいんじゃないか」と言われたという。息子の尊さんは二十歳の大学3年生になった。尊さんは「寂しさはめちゃくちゃあったけれども、小学生くらいの自分にとっては(落語は)子守歌だった」、雨花さんは「やるなと言う人が99パーセント、やっていいと言うのはうちのせがれだけだった」と述べた。真打ちお披露目の初日。この日に選んだ演目は「転宅」。泥棒に入られた女性が逆に泥棒を手玉に取る話。有名な古典落語にアニメのキャラクターが登場。たくましく生きる姿を笑いで表現した。これから先(落語で)何を伝えていきたい?との問いに、雨花さんは「“(人生)なんとかなるさ”ということ“心配する必要ないんだよ”ということをおかしみで伝えられたらいいなと思います」と述べた。