埼玉県飯能市の鍛鉄家・加成幸男さんはこの道35年。活動拠点には彼による作品があちらこちらに展示されている。加成さんは鍛鉄と呼ばれる技法を使い、1本の鉄の棒から溶接をせずに作品を作る。まずは1000度以上に熱した炉に鉄の棒を入れ、熱した鉄を重さ1.6キロのハンマーでたたいていく。鍛鉄は時間との闘いで、鉄が冷めるまでの2、3分が勝負。この工程、繰り返すこと3回で作品となるカタツムリの殻の部分が姿を現した。二手に分かれた目はハンマーの上からさらに大きなハンマーでたたいて鉄を二手に分けた。最後はこまめに火を当てながら軽くたたいて仕上げる。実はこのカタツムリの装飾がきっかけで加成さんは鍛鉄家の道に進むことになる。高校卒業後、消防署員になった加成さん。21歳のとき、地元の飲食店でそのカタツムリに出会った。すぐさまこのカタツムリを作った鍛鉄家のもとに弟子入り。ヨーロッパでの修行も経て30歳で独立した。その職人人生でこだわってきたのが曲線の表現で、海外でも技術が高く評価されている。去年、ヨーロッパで開催されたコンクールで金賞を獲得。加成さんのもとには海外から学びに来る職人もいる。そして今、加成さんは作品を通して飯能市を盛り上げたいと考えてるそうで、市内の公園で開かれたアートイベントに参加。子どもたちは鍛鉄での器作りを体験した。メインイベントはベンチの制作。2日間かけて鍛鉄で作る様子を公開、廃材を利用したベンチが出来上がった。加成さんは鍛鉄を通じて飯能を有名にしたいなどと話した。