国会の委員室にずらりと並ぶ肖像画。衆議院議員を11期務めた加藤六月や自民党総裁を務めた河野洋平。描かれているのは、いずれも国会議員を25年以上務めた与野党の議員たち。この議員たちの肖像画を今も描いている画家がいる。栃木県に住む大輪信雄が政治家の肖像画を描き始めたのは7年前。衆議院事務局からの依頼を受けたのがきっかけだった。これまで閣僚経験者など7人の国会議員の肖像画を手がけている。大輪は肖像画にしか表現できないことがあると言い「その人の人生観みたいなものを表現する。自分なりに想像力を働かせている」と話した。そもそも政治家の肖像画の起源はいつからなのか。神戸大学・宮下規久朗教授によると中世あるいは近世のヨーロッパでは国王が自分の肖像画を作らせて宮殿に飾ったが立憲君主制になって政治家の肖像画にとって代わったという。国会議員の肖像画はかつては在職25年以上になると制作費として公費から100万円が支出されていた。それが2002年、議員特権の1つとされ廃止された後は肖像画は自費での制作となった。それでもおよそ6割の議員が希望するという。元法務大臣で自民党の金田勝年議員は「肖像画があることで真摯に政治と向き合える」と語っていた。希望者は与野党を問わない。立憲民主党の玄葉光一郎元外務大臣は肖像画を残すことを最初はちゅうちょしたが、自分の政治家としての終わりを考えた時考えを変えたと言う。一方、肖像画を描く大輪はこの日、作成を依頼された地元市長のもとを訪ねた。鹿沼市・佐藤信市長は「ああいう人だったと思い出してもらえる肖像画というのは意味がある」と話した。大輪は政治家の人生を1枚の絵に凝縮できると語っているが、肖像画を残す習慣は国会だけでなく地方議会でも徐々に少なくなっている。デジタルの時代に今も描かれ続ける政治家の肖像画。その意義はいったい何なのか、いまも私たちに問いかけている。国会には現在、260枚もの肖像画が掲げられているが、地方議会ではどのように扱われているのか。次回はその実情を詳しく伝える。