アメリカ・トランプ大統領の就任から2か月。政権とメディアの関係に変化が起きている連日、さまざまな場面で取材に応じ、注目されるトランプ大統領。いまトランプ大統領のメディア戦略において重要な役割を果たしているのが、SNSなどで情報発信する新興メディア。大統領選挙の際は、若者を中心に人気を集めるネット配信番組に相次いで出演。新興メディアとの距離を縮めるトランプ政権。一方、伝統的なメディアの多くに対して、対決姿勢を強めている。「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」に変更する大統領令を巡っては、「AP通信が名称変更に従わない」として、大統領執務室での取材を禁止した。直近では「(有力紙)ニューヨークタイムズは不誠実でゴミ、国民の敵だ」と発言。リベラル系大手テレビ局のコメンテーター・リチャード・ステンゲル氏は「伝統的なメディアが難しい立場に立たされている」としたうえで、「トランプ大統領の発言に事実と証拠をもって冷静に反論するのが最善の対処法だ」と述べた。ウクライナ、戦争について言及。アメリカ・ホワイトハウスでの会見でも変化が起きている。立ち見をしている記者たち。最近目立つのが、新興メディアの姿。会見での質疑も、これまではほとんどが大手メディアだったが、新興メディアに積極的に質問の機会が与えられるようになった。新興メディアネット配信番組・ナタリー・ウィンターズ記者は、保守派に人気のネット配信番組の記者。みずからもアメリカ・トランプ大統領の支持者を公言。1月には、初めてホワイトハウスでの取材許可を得た。ホワイトハウス前で早速、中継を始めると、伝統的なメディアへの批判を展開。トランプ大統領の元側近が司会を務める番組で、日々政権の政策を発信。ウィンターズ記者は「トランプ大統領の支持者の意見を反映している。偏っているといわれる場合もあるが、政治的な意見を隠していない」と語った。トランプ大統領による新たなメディア戦略。そのねらいについて、ジョージ・ワシントン大学・トッドベルト教授は「SNSなどを使えば、伝統的なメディアでは伝えないことをより自由に発信できる。トランプ大統領はその点を利用している」、さらに「新興メディアを通じて、支持者向けの情報発信が増えている」と指摘したうえで「国全体ではなく、特定グループだけに発信すると、団結よりも分断を加速させる。トランプ大統領はメディアのあり方を変えた」と述べた。保守系の新興メディアも使って、伝えたい情報を発信していくトランプ大統領の戦略が見えてきた。こうしたメディア戦略は、SNSの広がりで、世界各国でも変化の兆しを見せている。メディアの役割も含め、この潮流の行方をしっかりと見ていく必要がある。
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