NHKのニュースサイトから深掘り記事を紹介。かつて“不治の病”と言われたエイズの治療薬を世界で初めて発見し、“治療できる病気”へと変えた日本人研究者の満屋裕明さんにインタビューした記事。満屋さんは75歳となった現在でもアメリカと日本を行き来しながら研究を続けている。今年開発に関わった5つ目の治療薬が承認された。エイズの患者が世界で初めてアメリカで報告されたのは1981年のこと。発症すると免疫機能が失われ様々な感染症に襲われて命を落とす病気は、世界に衝撃を与えた。1985年には世界中でエイズ患者が確認されるようになった。満屋さんがアメリカで研究を始めたのは、エイズが“死に至る病”と恐れられていた頃だった。当時は研究者の間でも恐れる人が多く、治療薬を見つけるための研究は孤独の中の挑戦だったという。逆境の中、満屋さんは実験手法を確立し、数十種類もの薬品を試した末、ガンの治療薬として開発されていた物質にウイルスの増殖を抑える効果があることを発見。「AZT」と呼ばれる薬は1987年に実用化され、世界初のエイズ治療薬となり患者に希望をもたらした。「AZT」は1日5回の服薬が必要だったが、満屋さんはより効果が高く副作用が少ない新たな治療薬の研究を続け、次々新たな薬を開発。いまでは1日1回薬を飲めば健康な人と変わりなく生活できるまでになった。ただ、エイズを取り巻く状況は予断を許さない。アメリカの対外援助削減などにより、アフリカの一部地域などでは治療薬が不足しつつあり、2030年までに900万人以上が亡くなるという試算も報告されている。世界情勢の変化で国際的な協力体制が難しくなっているのはエイズだけではない。「国境を越えて広がる感染症への備えも危機にある」と満屋さんは指摘する。満屋さんは「感染症を乗り越えていくために、まさにいま研究を重ねることが重要」と話す。
