熊川哲也はKバレエを率いて25年。多くのダンサーを育て、様々な作品を世に送り出してきた。熊川が「振付家として大きく成長できたきっかけの作品」と言うのが『海賊』。初演は1856年にパリ・オペラ座で行われたが、バレエ史に埋もれた全幕上演の少ない作品だった。言葉のない世界では話がわかりづらく複雑な内容。熊川版はわかりやすいストーリー、スピーディーな展開でドラマチックな演出で描かれる。『海賊』は男たちが躍動する冒険活劇。従来は引き立て役の1人だったアリに熊川は明確な役割を与え、物語の主要人物に位置づけている。