ニュースウオッチ9 (ニュース)
コメの価格高騰が止まらない。きょう発表された東京23区の消費者物価指数の速報値。米類は去年の同じ月を70%以上上回り、これまでで最大の上昇幅となった。こうした中、国は深刻な不作や災害時などに限って市場に放出するとしていた備蓄米の運用を見直すことを決めた。仙台市太白区・東北工業大学の食堂。食べ盛りの学生たちが消費するコメは1日に約44キロ。これまで比較的価格が安い古米を使っていたが、去年の秋から手に入らなくなり今は価格が高騰している新米を使用。これ以上上がるとサービスが維持できないため備蓄米の放出で価格が安定することを期待している。東北工業大学教務学生課・目黒裕二課長は「コメの価格が高騰しないとなれば学生にこれまで同様の支援ができる」と語った。きょう国が決定した備蓄米運用の見直しとはどんなものなのか。生産者が作ったコメの多くは、JAなどの集荷業者に集められ、卸売り小売り店などを経て、消費者に届けられている。これまで政府の備蓄米は深刻な不作や災害時などに限って市場に放出するとしていた。今日、国はこの運用を見直しコメの流通が滞っていると判断した場合にも1年以内に同じ量を買い戻すことを条件に放出できるようにするとした。実際に放出に踏み切るかは今後の状況を慎重に見極めたうえで判断するとしている。背景にあるのがコメの流通の現場で起きている異常事態。農林水産省によると去年収穫されたコメは679万トンと前の年より18万トン増えたと見られている。ところがJAなどの主な集荷業者が買い集めたコメの量は前の年より21万トン減少。大量のコメの行方が分からない状態になってしまっている。農林水産省は十分な量のコメが市場に出回っていないことが価格高騰の要因の一つだと見て備蓄米の活用を検討していた。江藤農相は「売り渡せることになれば、それなりの効果は期待できるのではないか」と述べた。消えたコメはどこに行ったのか。創業90年を超えるコメ販売店を取材。今年は仕入れられるコメの量がかつてないほどに減っているという。店では安いコメから順に売れていて在庫は常にぎりぎりの状態。コメ販売店・平野光治代表は「さっぱりわからない。今までにない事態」と語った。老舗のコメ販売店でも分からないというコメの行方。生産者と日頃接している集荷業者はどうなのか。今朝、集荷場を訪ねると13トン余のコメが。集荷業者・兼杉享介さんは「例年通りに近い数字で集荷はできた」と語った。生産者からコメを集荷し卸売り業者などに販売しているこの会社。今年は平年並みの量を集められているという。ただ生産者からは、これまでつきあいのなかった業者が米を買いに来ているという話をよく聞くという。コメの流通現場で起きている異変。生産と流通に詳しい宇都宮大学・小川真如助教は「農林水産省はコメを投機目的、短期的な差益を稼ごうという業者、個人がいるとみているのでは」と述べた。指摘したのは、さらなる値上がりを見込みコメを買い集めている人たちの存在。その結果、流通量を把握することが難しくなっているのではという。小川助教は「中小のこれまで扱っていない業者も含めて入り組んだ状態でコメを集めた結果、コメはあるはずなのに今どこにあるか分からない状況になった」と語った。今回の備蓄米の運用見直しは利ざやでもうけようとする人をけん制するねらいもあると見ている。小川助教は「流通段階で価格の高騰を抑える形になる。マネーゲームのためにコメを集めようとしている人たちがいるのではないか。そういう人たちへのメッセージ。あるはずの米が出て来てほしいというのが国の思惑」と語った。