Nスタ (ニュース)
緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決める「トリアージ」。当時はまだ社会にほとんど浸透しておらず、国内の災害で実践されたのは阪神淡路大震災が初めてだとされている。1月17日、兵庫県立淡路病院では、10代の2人を含む6人に蘇生中止の末、死亡診断が下された。究極の決断を淡々と下す松田さんを目の当たりにしたときの心境を、水谷さんは今でも覚えている。震災発生から8年後、トリアージを実行した松田さんはこの世を去った。淡路病院を離れた水谷さんはその後、あの日の記憶からは目を背けるようになったという。しかし震災発生から10年目、震災を経験した医療従事者と、そうでない医療従事者との間で、災害への意識に大きな差があると痛感する。いつかまた大災害が起きたときのために、災害医療の厳しさを少しでも知ってもらおうと、あの日の記憶と映像に向き合うことを決めた。以来毎年ビデオを使って医療の世界を目指す学生や、病院関係者などに講義や講演を続けている。ビデオを使った講演や講義は20年間で100回を超えた。あの日の現場に立ち会った医療人としての責任と覚悟を胸に、水谷の活動は続く。