NHKニュース おはよう日本 (ニュース)
西日本豪雨などの相次ぐ洪水をきっかけにして、大雨の際に川の氾濫を防ぐ役割を担う治水ダムの放流にAIを活用しようという新たな取組みが始まっている。西日本豪雨の際、愛媛県では一級河川の肱川が氾濫して、大きな被害が出た。これを教訓にダムの事前放流が全国で広まった。大雨が予測される場合、あらかじめ放流を行ってダムの空き容量を確保する操作。国交省・水資源機構管理のダムで操作ができるのは、7年前の14か所から131か所に増えた。しかし、この操作は簡単ではない。想定よりダムへの流入量が少ない「空振り」となった場合、農業や発電などに影響が出るほか、渇水につながるリスクがあるため。野村ダムの管理事務所にあるモニターにはダムの周辺に設置されている雨量計や水位計など、10か所以上のデータが表示されていた。担当者たちは、こうしたデータを常に監視するとともに、気象庁の予報資料などをもとに流域からダムに流れ込む水の量を予測し、放流する量を決めている。しかし、事前放流を適切に行うためには、ダムに流れ込む水の量を精度よく予測することが欠かせない。国土交通省四国地方整備局・肱川ダム統合管理事務所の多田寛管理課長は「まだまだ精度の問題がある」などと述べた。
AIを使ってダムへの流入量を予測しようという取り組みを国が試験的に始めている。AIが過去40年分の雨量と流入量などのデータを学習し、雨でダムにどのくらいの水が流れ込むかを算出する。ことしの梅雨の期間中に雨が降り続いていた際の予測画面を紹介。これまでのモデルでは流れ込む水の量を午前0時の時点で毎秒150トン、AIは60トンと予測。実際に流れ込んだ水の量は50トンで、これまでのモデルよりAIの方が高い予測精度となった。AIの導入は事前放流だけでなく、効果的な防災対応にもつながると期待されている。これまでは流入量を予測するために担当者が予想される雨量を事務所のシステムに手入力する必要があったが、AIではそうした手間を省けるため、少ない人数で災害対応にあたることができる。一方、これまでに経験したことのない大雨の場合、過去に蓄積されたデータから予測するAIでは対応ができないため、仮想の洪水を学習させるなどの改良が必要。国はAIの予測精度をさらに向上させた上で、実用化につなげていく方針。国土交通省四国地方整備局・肱川ダム統合管理事務所の猪熊敬三副所長は「精度が高まれば非常に有用」などと述べた。国土交通省によると、AIによる予測の取り組みは4年前から始まっていて、今年3月末の時点で全国77のダムで試験的に導入。