NHKスペシャル メジャーリーガー大谷翔平 2024 試練と決断 そして頂点へ
50-50、指名打者としてのMVP、ワールドシリーズ制覇を果たした大谷翔平。プロスポーツ史上最高の総額1015億円でドジャースと契約。開幕戦で幸先よくスタートを切った大谷だったが直後、元通訳の水原一平が違法賭博を行い大谷の口座から約26億円を不正に送金した罪などで起訴された。大谷は「僕の中ではまだ終わっていない」と話した。大谷と水原が出会うきっかけとなった日本ハム時代の監督、栗山英樹は「半分信じられない、翔平には申し訳ないと伝えた」と話した。疑惑の目は大谷翔平自身にも向けられた。大谷は開幕から40打席本塁打なし。自己ワーストだった。睡眠が足りてない日が続いたという。
渦中の大谷翔平を写真に捉えたドジャース専属のカメラマン、ジョン・スーフーは写真に「孤高」というタイトルをつけた。大谷の姿をカメラに収めていく中で、フレディ・フリーマンが大谷に寄り添う瞬間が忘れられないという。フリーマンは「助けが必要ならここに頼れる人がいるということを彼に伝えたかった」と話した。開幕から41打席目、ドジャースで初めてのホームランを打った。ひまわりの種のシャワーはその時からだ。栗山はこのホームランを見て「みんなごめんな」って言っているように見えると話した。大谷は以前はいつも前の通訳と一緒にいたが、言葉の壁など気にせずチームメートとコミュニケーションをとるようになったとキケ・ヘルナンデスは話した。
「ドジャースの戦法」には個人の名声や成績よりもチームの勝利を最優先にするドジャース野球の流儀が説かれている。時代が変わってもドジャースの流儀は貫かれてきた。今シーズン、チームはドジャース野球の真価が問われる逆境に何度も直面した。看板選手ベッツの戦線離脱、フリーマンも息子が難病を発症し一時チームを離れた。この危機でチームを救ったのは大谷が見せたドジャース野球だった。貪欲に次の塁を狙い得点のチャンスを広げる盗塁は自己最多となる59もの数を積み上げた。積極的な盗塁で相手のミスを誘発するシーンが何度も生まれた。二刀流が封じられた今シーズン、大谷は開幕前からどうすればチームに貢献できるか考えていた。盗塁で貢献しようとする大谷にはリードの距離という課題があった。盗塁の平均タイムは昨シーズンより0.3秒短縮。さらに、リードは30センチ大きくなっていた。
大谷はカメラの前で何度となく、ポストシーズンに出ることを語っていた。ことし、初めての大舞台に進出した。大谷が最も追い詰められたと振り返ったパドレスとの激闘。スリーランホームランの場面では一気に同点にしようという意識はなかったという。負ければ終わりの第4戦、このシリーズ初めての大量リードでも大谷はドジャースの流儀を見せた。
フリーマンは復帰したものの、今度は足首を負傷。肋骨も折れ、満身創痍でプレーを続けていた。選手生命をかけて全てを尽くす姿もまた、大谷が目の当たりにしたドジャースの精神だ。ドジャースはワールド・シリーズにたどり着いた。世界一まであと3勝の試合で、大谷は盗塁をして肩が外れた。振り返ってみるとシーズン中は左肩が結構痛かったと大谷は言った。先にニューヨークに向かうチームメートに大谷はメッセージを送ってチーム全体のムードが変わったという。
大谷は肩を負傷しても試合に出た。この一年、ドジャースで盗塁を積み上げてきた大谷。大谷最後まで試合に出続けた。「世界一の選手がチームにいることが全員の自信になった」とロバーツ監督は話した。
大谷が3回目のMVPに選ばれた日、球団カメラマンが1枚の写真を投稿した。開幕戦後、騒動の最中に撮られた写真だった。タイトルは「君こそMVPだよ」。二刀流として復帰を目指す来シーズン、2度の手術を経験した大谷は「最後のチャンス」と話した。一番の目標は野球自体を上手くなって現役のうちにどれだけ多く納得できるものを残していけるかだと話した。