プロフェッショナル file:537 一粒青々、己を込める
関氏は良質な米を作る農家を耳にすれば、全国各地へ趣き、指導を仰ぐ。小さい頃は田んぼが遊び場だったが、高校生の頃、農業は最もやりたくない仕事だったという。反発するようにスノーボードに熱中するも、子供を授かった後は生計を立てるため、オフシーズンに実家の農業を手伝うようになった。昼夜を分かたずに働いても、バイト代は1日9000円。加えて、父の博之氏は農薬を使わず、周囲の農家からすると笑い種だった。関氏は当初、理解できなかったというが、「他の人ではできない。やろうと思ってもできない」、「本当にいいもの作ってる」などと考えるようになった。27歳で競技を引退し、農業に専心した。良質な米がとれた田んぼでは多様な生き物が息づき、小さい頃に好きだった景色が思い出されたという。
2014年、関親子の米はコンクールで世界一に輝いた。労苦が報われたと、関氏は涙を流したという。今、関氏をリスペクトする地元農家は多く、農業にやりがいを見出している。