時論公論 (時論公論)
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受けて日本産水産物の輸入を停止している中国が輸入の再開に向けて手続きに入ることになった。ただ10都県への食品の輸入停止措置は続けられる。中国経済は内需の停滞が指摘されており、みずほ銀行・細川美穂子上席主任研究員は対中関係を強め米中貿易摩擦のマイナス面を補うことを意識しているなどと指摘。去年、中国への水産物の輸出額は61億円と9割以上減少した。ただ日本国内では応援消費が盛り上がった他、ベトナムの水産加工会社を開拓するなどした結果アメリカやベトナム向けの輸出が大幅に増えた。しかしトランプ大統領による相互関税によりようやく開拓した販路の先行きにも不透明感が高まっている。こうした中での中国向け輸出再開に期待の声の一方代替先から振り向けられるか懸念もある。
輸出再開に必要な手続きのうち新たに対象となった放射性物質の検査証明書を取得する検査に時間がかかるため輸出再開には数か月程度かかるという見方が出ている。さらに10都県については食品の輸入停止措置が続いている。政府は2030年に農林水産物・食品輸出額5兆円を目指している一方、国内市場ではホタテが異例の高値になっている。鹿児島大学・佐野雅昭教授は海外向け取引は水産業の発展につながるも食料安定確保の観点で国内消費が支える仕組み作りを政府はより踏み込んで考える必要があると指摘している。