NHK地域局発 (NHK地域局発)
阪神タイガース・湯浅京己投手に密着取材。整形外科を訪れた湯浅投手はリハビリメニューに取り組んでいた。病気の影響で下半身の筋力が大きく落ちていて、以前の活躍からは想像もできない姿を見せた。湯浅投手がブレークしたのは入団4年目の2022年で、セ・リーグの最優秀中継ぎのタイトルを獲得。翌年のWBCでは日本代表に選出され、世界一の栄冠を手にした。またこの年の日本シリーズでは38年ぶりの日本一を引き寄せる投球をみせた。しかし去年、体に強い違和感が現れるとコントロールは乱れ球威も落ちていった。原因は国指定の難病の胸椎黄色じん帯骨化症だった。長年この病気を研究している福島県立医科大学の加藤医師が、投手が発症することが多いと指摘した。去年8月に手術を行った湯浅投手はマウンドに戻れる日を信じて闘うことを決めた。
手術から半年、阪神の2軍キャンプに湯浅投手の姿があり、ブルペンで投げ込みができるまでに回復していた。キャンプ終盤には術後初めて実戦登板に臨んだが、本来の姿とは程遠いピッチングとなった。湯浅投手の野球人生は平坦な道ではなく、高校時代は成長痛に悩まされて2年生の秋まではマネージャーをしていた。独立リーグを経て阪神に入団したあとも、度重なる腰の怪我で2年間一軍での登板はなかった。湯浅投手は自分自身が不安になる中で、母親に大丈夫と言われたことでやれることはやろうという気持ちになれたなどと話した。
湯浅投手はストレートの球威が戻らない中で、一軍に上がるために新たな変化球の習得に取り組んだ。4月下旬に1軍に昇格し登板のチャンスを得るも、病気の影響で右足に力が入らない状態だったが、カットボールで約1年ぶりとなる復帰登板を無失点に抑えた。5月3日の試合では、湯浅投手の両親がスタンドで見守る中で登板し、無失点に抑えた。湯浅投手はマウンドに上がり続け、首位を走るチームを支えた。交流戦の中盤に失点が続き1軍登録を抹消された湯浅投手だったが、落胆する様子は見られなかった。湯浅投手はこれまでの逆境について、人生の中でなくてはならない時間で今までにあったことすべてが宝物だと話した。