NHKニュース おはよう日本 (特集)
1年半にわたる基礎訓練を経て、正式に宇宙飛行士に認定された諏訪理さんと米田あゆさん。2人はこれまで、小型飛行機の操縦や無重力に近い環境で体をコントロールする訓練など、さまざまな基礎訓練を積み重ねてきた。中でも、宇宙飛行士に欠かせないのがリーダーシップ。NHKがその訓練に密着した。ことし7月、陸上自衛隊の協力のもと行われた訓練。地図とコンパスだけを頼りに、制限時間内に複数のチェックポイントをメンバー全員で目指す。訓練の目的は、リーダーシップを養うこと。諏訪さんと米田さんはそれぞれ、JAXAの職員や民間企業の社員などで作る分隊の隊長を務める。医師としての経験から、常にメンバーの体調を気遣い意見を聞きながら進んでいく米田さん。順調に見えたが、みずからの判断に自信が持てない場面が続いた。指導のために同行していた自衛隊の担当者から指摘を受ける。
一方の諏訪さん。メンバーと話し合いながら、“和”を大切にしようと序盤を進めていた。しかし、訓練が進むにつれて、その表情が険しくなっていく。多くの判断を求められる中、メンバーの意思を統一できていないと感じ始めていた。あえてメンバーへの相談は最小限にして、素早く決断していった諏訪さん。黙々と先頭に立って引っ張っていくことにした。しかし、このやり方がメンバーへの負担に気付けない事態を招いていた。諏訪さんのペースに食らいついていたJAXA職員のメンバーが足を痛めてしまった。メンバーは、離脱することを強く希望。諏訪さんは、離脱させることを決断。このとき“諦めずに進もう”と声をかけることはなかった。同じく夜間の行動中、米田さんたちにも疲れが見え始めていた。深夜になっても笑顔を絶やさず、メンバーに接していた米田さん。リーダーとして真の優しさとは何か、問われることになる場面があった。重要なミーティングの最中、1人が疲れて横になりながら話を聞いているのに気が付いた。ここで休ませることを優先してしまい、注意しなかった。
後日行われた訓練の振り返り。米田さんは、このときの対応について自衛隊の担当者から指摘を受けた。一方、諏訪さんが脱落者を出したことについて、陸上自衛隊の担当者は「私がもし諏訪さんだった場合は、どうにかして全員を連れて行く方策を考えていきたい、より考えを深めていただけたら」と述べた。課題を厳しく指摘された2人。宇宙飛行士のリーダーシップとはどうあるべきか、認識を新たにしていた。月面探査計画では、2026年9月以降の有人での着陸を継続的に行うことを目指していて、諏訪さんと米田さんの今後の活躍が期待される。