ニュースウオッチ9 (ニュース)
止まらないコメの価格高騰。この問題の解消につながるとして期待されているのが、国による備蓄米の放出。国はあさって、入札で売り渡す備蓄米の数量や対象者などの概要を公表すると明らかにした。東京・目黒区にある昼間は土鍋ごはん食べ放題の飲食店では、今週も仕入れ値が上がるなど、苦境が続いている。去年一部のメニューを値上げして以降は、価格を据え置いているが、加藤雄大店長は「昨年2月と比べると倍の値段。正直苦しい」と語った。
飲食店や食卓への影響が広がる中、政府が検討している備蓄米の放出。江藤農林水産相はきょうの会見で、入札で売り渡す備蓄米の数量や対象者などの概要をあさって14日に公表すると明らかにした。江藤農相は「国民生活に対してあまりにも大きな影響が出ている。流通をある程度円滑化するために備蓄米の放出を行う」と述べた。備蓄米は、去年6月の時点で、全国300余の倉庫で91万トンが保管されている。埼玉県の倉庫にはきょうもコメが運び込まれていた。おいしさを保つため、年間を通して温度は15度以下、湿度は60%〜65%で保管。これまで市場への放出は災害時などに限られていたが、政府は今回、運用を見直し、流通の円滑化を目的に備蓄米が放出されるのは初めてになる。
備蓄米の放出を急ぐ背景にあるのが、コメの流通現場で起きている異変。農林水産省によると、去年収穫されたコメは679万トンと、前の年より18万トン増えたと見られている。ところがJAなど主な集荷業者が買い集めたコメの量は、前の年より21万トン減少。農林水産省は、買い付け競争が過熱した結果、JAなどの集荷業者にコメが集まらず十分な量が市場に出回っていないことが要因だと見ている。このため備蓄米はJAなど集荷業者を対象に参加を募って入札を行ったうえで売り渡される予定。
こうした中、東京・世田谷区にあるコメの販売店では、仕入れ価格が上昇。去年の秋以降、一部の商品を10%ほど値上げした。今のところ必要な量は確保できているものの、店頭に並ぶコメの種類は例年の半分ほどに減っている。卸売業者からは「コメの確保そのものが難しくなってきている」と伝えられていて、備蓄米の放出にあたっては「十分な量を出してほしい」としている。
気になるコメの価格の行方。備蓄米の放出がどう影響するのか、三菱総合研究所・稲垣公雄研究理事は「短期的にはアナウンス効果もあって、(放出される備蓄米の)数量が確定した時点で一定程度下がる可能性があるのではないか」と述べ、一方で「中長期的には、今後のコメの需給に左右される」という見方を示している。
コメは適正価格へ向かうのか。値上がりに苦しんでいた都内の飲食店。期待と裏腹に、先が見えない不安も感じていた。江藤農林水産大臣は「すべてのものは自由経済のもと、市場で価格は決まるべき、コメもその例外ではない」とも話している。流通の円滑化を目的とした備蓄米の放出は初めてのケースで異例の対応といえる。数量や対象者など概要の公表が待たれる。