新疆ウイグル自治区のいま 続く警戒・監視

2024年7月2日放送 21:30 - 21:39 NHK総合
ニュースウオッチ9 (ニュース)

中国ではスパイ行為の取り締まり強化を目的とした「改正反スパイ法」が去年施行されるなど、習近平指導部は統制を一層強化している。こうした中、中国が国内の安定を図るため統制と強めてきたのが新疆ウイグル自治区。厳しい情報統制が敷かれているこの地区にNHKの取材班が入った。
新疆ウイグル自治区の中心都市・ウルムチ。市の中心部では高層ビルが建ち並ぶなど発展ぶりがうかがえる。一方で中心部の至る所では装甲車が走っていたり、大量の監視カメラが設置されるなど厳しい監視体制が敷かれていた。取材班に対しても同じ男性たちや車といたるところで遭遇。写真を撮ったり誰かに報告している様子が見られた。新疆ウイグル自治区はイスラム教を進行するウイグル族が住民の半数近くを占める一方、漢族が政治・経済活動の面で主要な地位を占めるなど民族間の格差も問題となってきた。こうした中、15年前の7月5日にはウルムチで中国政府への不満を訴える抗議デモが大規模な暴動に。その後中国政府は「テロ対策」としてウイグル族に対する締め付けを強化してきた。中国政府は観光振興を進めるなど自治区の経済政策に力を入れ、去年のGDPは暴動がおきた2009年に比べ約4.5倍に成長したという。自治区の政府も成果を強調している。
一方、取材を進めると人々の暮らしが様変わりしている実態も見えてきた。10年ほど前は多く見られたウイグル族の慣習であるヒゲを生やした男性や、ベールを被った女性。今回の取材で見かけることはなかった。背景にあるのが主教の過激化を防ぐため2017年に地元政府が制定した、イスラム教の伝統的な慣習を”過激思想”の兆候とみなし禁止した「脱過激化条例」。変化は宗教施設にも。スマホアプリでモスクの場所を訪れると、建っていたのは共産党のスローガンが書かれたモニュメント。近くにいた人にモスクのことを聞くと多くは語らなかった。自治区にあった2万4,000カ所以上のモスクのうち65%が破壊されたり損傷したりしたと推定する調査結果も出されている。これに対し当局は一部のモスクについて「地元の信者の要求に基づき移転や拡張などを行っている」としている。さらに欧米からは大勢のウイグル族がテロ対策などを口実に収容施設に不当に拘束されているとの声も上がっている。この問題を追跡しているオーストラリアの政府系シンクタンクが自治区の衛星写真を分析したところ、監視塔や鉄条網がある場所を380カ所以上見つけた。これらが何らかの収容施設ではないかとみている。そのうち61箇所は2019年7月以降に新設・増築されていると指摘している。
今回取材班はシンクタンクが2020年に新たに開設されたと指摘する施設に向かった。南部・カシュガルの中心部から車で約1時間、荒れ地の先にあったのは巨大な施設。高さ10メートルほどの壁で囲まれた敷地内にいくつもの建物が建ち並ぶ。監視塔には迷彩服を来た監視員とみられる姿が。敷地から出てくる人の姿も複数確認できた。現在も利用されているとみられるが、何の施設なのかは確認できず。先月、アメリカは報告書を公表。「中国がウイグル族に対していまも監視・弾圧を続けている」として非難した。一方、中国政府はこうした批判を強く否定している。習近平指導部は今後も自治区での統制を続ける姿勢で、専門家は「少数民族政策は国内の安定維持に関わる重要問題」と指摘している。「中国・習近平指導部は少数民族だけではなく人権活動家・香港民主家など政府を批判したり自由を求めたりする市民への締め付けを強めている」という懸念の声が高まっている。


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