時論公論 (時論公論)
ニューヨークの国連本部では核兵器禁止条約の3回目の締約国会議が5日間の日程で始まった。中満事務次長は核兵器に依存を強める国際社会に強い危機感を示した。会議には日本被団協・濱住氏も出席し「原爆は本人の未来を奪い家族も苦しめる悪魔の兵器」と訴えた。核兵器禁止条約の成立までには米・露の軍縮締結やNPTがあった。2021年に発効され73の国と地域が批准しているが、核保有国や核の傘のもとにある国々は参加していない。日本被団協は40年前から必要性を訴え現在まで後押ししているという思いがある。2022年にウクライナへ侵攻を開始したプーチン大統領は、欧米の支援を受けて抵抗するウクライナに対して核兵器の威嚇を始めた。2023年にはイスラエルの官僚が原爆使用を示唆。ゼレンスキー大統領は「NATOに加盟できなければ核保有も選択肢」だと発言したほか、イランでも核兵器開発を求める声が高まっている。韓国では世論調査で66%が核保有を支持すると答えている。日本政府の対応は、先月に岩屋外相がオブザーバー参加の見送りを発表している。オーストリア外務省・クメント氏が来日した際は「核兵器がもたらす影響へのリアルな認識を欠いたまま核戦力への依存に傾いている」と指摘している。去年のノーベル平和賞の演説で日本被団協・田中代表委員が原爆犠牲者への日本政府の補償について言及。政府は戦争被害については“受忍論”を掲げている。原爆投下から80年を迎えるいま、高齢化の中で活動を続ける被爆者の訴えに耳を傾ける必要がある。