情熱大陸 (情熱大陸)
お昼時、取材スタッフを気遣って自ら食事を用意してくれた脚本家・吉田恵里香。脚本は時にこうして自宅でも書かれている。去年一大旋風を巻き起こした朝ドラ「虎に翼」は日本初の女性弁護士になり裁判所の所長にまで上り詰める主人公の姿は共感を呼び、また優れて今日的だった。あまりの反響に放送終了後全シナリオが書籍化され、発売記念のサイン会まで開かれた。そしてスピンオフドラマの制作も進んでおり今回の主役は朝ドラで主人公の法律事務所に勤めていた山田よね。演じる土居志央梨とは久々の再開だった。大学在学中にデビューし、キャリア18年で映画やドラマ・アニメに小説と守備範囲は広い。臆せず時代を見つめる眼差しで恋愛感情も性的欲求も抱かない男女を描いたドラマ「恋せぬふたり」では向田邦子賞を受賞している。虎に翼が終わった去年秋、ゲン担ぎで切らずいいた髪をバッサリカットして医療用ウィッグのために寄付した。
4月にスピンオフドラマの打ち合わせで演出家やプロデューサーにざっくりとしたストーリーの提案。虎に翼で登場した山田よねと轟太一が弁護士事務所を設立するまでに光を当てる。人種や信条・性別などによる差別を禁ずる日本国憲法14条をよねの支店から見つめるらしい。演出側の意見を聞きながら、輪郭をくっきりさせていくのが吉田恵里香のやり方だった。単発ドラマ72分の脚本を毎日8時間、10日ほどで書き上げる。無論、朝ドラとの整合性も必要である。他にもセリフに込める感情を書き添えることが少なくない。夫との間には5歳の一人息子がいてアイデアは忙しさの中で閃くこともあるという。出身は日本大学芸術学部の文芸学科で今年から講師として母校に招かれ、シナリオ創作の講座を引き受けている。「前橋ウィッチーズ」は魔女を夢見る5人の少女たちが抱く悩みやネガティブな感覚をストレートに表現したTVアニメ。学生の質問は脚本家のあり方についてだった。
とらつば効果は思わぬ所にも及んでいた。東大で行われたシンポジウムへの出席依頼で副学長も虜にしていた。ずっと問われ続けてきたジェンダーをめぐる偏見や差別、そこに切り込んだ脚本家には期待が寄せられている。けれどとらつばには批判もあった。
