ガイアの夜明け トランプ関税と日本の製造業
なぜトランプ政権は高い関税をかけて、製造業を取り戻そうとするのか。その理由を探るためアメリカ・オハイオ州の小さな街を訪ねた。人口5万2000人のミドルタウン、主な産業は100年以上前から創業する製鉄所。USスチールより生産量が多い、クリーブランド・クリフスが運営している。錆びた工業地帯「ラストベルト」の典型的な田舎町。この街に製鉄所ができたのは1899年、自動車産業の発展と共に従業員も増え街は活気づいていった。製鉄所で働けば、中産階級の豊かな生活が約束された。しかし、自由貿易によるグローバル経済の拡大と共に安い海外製品が入ってくると、アメリカの鉄鋼業は急速に力を失っていった。ミドルタウンの製鉄所の従業員は、この20年で4000人から2500人まで減っている。
ミドルタウンは、J.D.バンス副大統領の出身地として知られている。激戦州の白人労働者層から圧倒的な指示を集め、トランプ大統領再選の立役者とも言われている。そのバンス氏が選挙中に何度も訴えた公約が、アメリカに製造業を取り戻す。少年時代、ミドルタウンで貧しい生活を送ったJ.D.が、その悲惨な体験を描いた「ヒルビリー・エレジー」はベストセラーになった。市内にある支援団体の事務所では、生活困窮者に食べ物を支給している。建物から出てきたのは、食料品を両手いっぱいに持った親子など様々。今年に入り、130人が働く再生紙の工場も閉鎖された。アメリカの繁栄から取り残された人たち。
5月26日、この日は戦没者を追悼する祝日だった。ミドルタウンでは恒例のパレードが開催された。「製造業を取り戻す」それは、アメリカの繁栄から取り残された人たちにもう一度希望と誇りを取り戻すことでもある。