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今、各地で地域独自のクラフトビール造りが盛んになっている。そうした中、資源を究極的に有効活用しようという取り組みが、長崎県の壱岐島で動きだしている。九州の北側、玄界灘に浮かぶ長崎県の壱岐島は、毎日旬の魚があがることから“玄界灘の宝石箱”と呼ばれている。そんな魚に合うようにと、3年前から島内でビールの醸造が始まった。ビール工房を立ち上げた原田知征さんの動機は、島の外から人を呼び込みたいという思いだった。原田さんは年間およそ3万リットルのビールを造っているが、そこにはある特徴がある。使われているのは、廃棄される予定だったアコヤガイ。壱岐は真珠の養殖が盛んだが、これまで真珠を取り出したあとは、貝柱以外は廃棄されていた。そこで原田さんは、廃棄されるアコヤガイ2万個を譲ってもらい、濃厚なエキスを抽出。甘みとうまみを感じられるビールを造り上げた。循環型社会を目指すビール。製造過程で出る年間7トンの麦芽かすもすべて有効活用されている。兼業農家でさまざまな野菜を育てる松本和文さんの主力商品は、ヨーロッパが原産のビーツ。肥料を好む野菜で、栄養分の豊かな土壌が必要。そこで役立つのが、ビールを造ったあとの麦芽かす。窒素やリン酸などが含まれているため、土作りにはもってこい。島内での循環は、まだ終わらない。松本さんがビーツを持って向かったのは原田さんの醸造所。ひと回りしてビールの原料になるという。原田さんは「少しずつ勉強しながら、麦芽かすを使った堆肥で育った畑でホップをつくって、そのホップでまでビールをつくる。最終的には100%壱岐産のビールがつくれたらいいなと思っています」と述べた。