首都圏ネットワーク (ニュース)
子宮頸がんを予防するHPVワクチンの接種率。世代によっては80%に迫っているが2000年度以降の世代は著しく低い数字になっている。定期接種が始まった11年前、接種後に体の痛みなどを訴えた人が相次ぎ、国が接種の積極的な呼びかけを中止したため。おととし、効果と安全性が確認されたとして呼びかけが再開されたが、その9年間で接種の機会を逃した女性はおよそ260万人にも上ると推計されている。この世代の女性が無料で受けられるキャッチアップ接種。半年の間に3回の接種が必要で1回目の期限が今月末に迫っている。筑波大学のHPVワクチン集団接種の会場ではキャッチアップ接種の期限が迫る中、駆け込みで受ける人で予約はいっぱい。この大学では、ことし5月から月2回、隣接する附属病院と協力して対象の学生に向けて接種の機会を提供している。HPVワクチンはほかのワクチンと同様に接種後に頭痛や発熱などのほかまれに重い症状が出る可能性があるが対応策も取られている。不安や緊張によって接種後の症状が出ることが分かっており国はガイドラインを作り対応策を周知している。接種前の丁寧な問診で症状につながりうるリスクを見逃さないようにする。症状が出やすい可能性がある人には横になった状態で接種するなどの対応が取られている。さらに接種前後の不安や緊張を和らげるため音楽をかけている。このHPVワクチンが予防するのはヒトパピローマウイルスの感染。子宮けい部などに感染すると数年から十数年をかけてがんに進行するおそれがありがんにならなくても子宮や卵巣をすべて摘出しなければならないことがある。専門家は接種機会を逃していた世代にすでに影響が出始めていると指摘している。人生の選択に大きな影響を及ぼす子宮頸がん。その予防について同世代に知ってほしいと動きだしている人たちがいる。今月東京・中央区で開かれた中高生を対象にしたイベント。主催したのは医学部などに通う大学生。専門家の監修を受けたうえで子宮頸がんやHPVワクチンに関する出張授業を行っている。医学部生の1人・大坪琉奈は自身も中高生のとき接種の呼びかけが中止されていて同世代にワクチンについて知らない人がいることを危惧して活動を続けている。海外のHPVワクチンの現状に詳しいケンブリッジ大学の江川長靖によると英国では2040年までに子宮頸がんを撲滅レベルにすることを目標に掲げている。またスコットランドやノルウェーでは13歳までに接種した世代の発症例がゼロになったという報告も出てきており、海外では接種が進んできている状況という。一方で日本では今もなお子宮頸がんで亡くなる人が年間およそ3000人。専門家は救えるはずの命が救えない事態が起きていると警鐘を鳴らしている。HPVワクチンについて分かってきたことが増えたことでもしものことがあったときに診療体制などの受け皿が整備されている。本人が納得したうえで接種を検討することが大切なのでまずはHPVワクチンのメリットとリスクを知ってほしい。