- 出演者
- 岩渕梢
きょうは地震や水害で被災した歴史資料などを後世に残す活動について。1995年1月17日の阪神淡路大震災からあすで30年。さまざまな災害対策を推し進める大きなきっかけとなった地震だったわけだが、地域の記録や記憶を災害から守り継承していこうという活動もこの時が出発点になっている。阪神淡路大震災で行われた資料レスキューの活動。歴史研究者などが被災地を手探りで回り、民家などに残されていた資料を預かった。参加者は延べ500人以上。段ボール箱にして1500箱以上を救出したという。その後、活動は各地に広がっていった。宮城資料ネットは、東日本大震災などで被災した資料を救い出し洗浄作業を続けてきた。もちろん災害が起きた時は人命の救助生活の再建が最優先になると思うが、こうした地道な活動も行われてきた。その先駆けとなったのが、神戸大学を拠点に活動する「歴史資料ネットワーク」という団体。被災地に伝わる古文書などが不要なものとして処分されかねないとして、地震の翌月から活動を始めた。その地域ならではの歴史遺産は、災害が起きたあとの復旧や復興のよりどころにもなりうる存在。ただ、被災地で資料を探し出して救出保全するというのは時間のかかる息の長い取り組み。当初は1年程度の活動と考えていたということだが、震災対応が落ち着いたあとも各地の災害支援などが続き、この活動は今も続けられている。その取り組みをモデルにして各地でも資料レスキューが行われている。
地震や水害で被災した歴史資料などを後世に残す活動について。活動を行っている団体は2とおりの表記があるが、「資料/史料ネット」と呼ばれている。現在30近い団体がある。災害が起きた時は行政の他、博物館や図書館などがそれぞれの持ち場や専門性に応じて資料の保全にあたる。こうしたいわば公的な活動に対し、資料ネットの多くは有志による市民参加型のボランティア活動という点や、文化財に指定されていないものを中心に、地域の中にある資料を幅広く救い出そうとしていることが大きな特徴。行政職員が参加しているところももちろんあるが、その組織や専門の枠を超えた自主的な集まりで、寄付を募るなどして活動をしている。各地の団体を統括するような組織もないが、年に一度人間文化研究機構とともに研究交流集会を開き、活動報告や情報交換を行っている。今年度は活動30年に合わせて今月に神戸市で集会を開き、約200人が参加。資料ネットは各地に点在していて、資料保存の重要性が浸透してきたことを示しているが、一方で災害が多発していることの裏返しとも言える。例えば2011年3月11日の東日本大震災では、東北や茨城の団体が対応に追われた。2016年4月の熊本地震では、その月のうちに熊本に資料ネットができた。水害対応もある。2018年の西日本豪雨では、中国地方や愛媛県、翌2019年の東日本台風では東北や関東、さらには長野と活動する団体はさらに増えた。すでにできていた資料ネットが災害に直面したというケースもあるし、こうした災害のあと新たに立ち上がった団体もある。去年の元日の能登半島地震でも、石川県では地震のあとの去年3月に「いしかわ史料ネット」が発足し活動を続けている。
地震や水害で被災した歴史資料などを後世に残す活動について。能登半島地震の被災地で文化庁が行っている文化財レスキュー事業。いしかわ史料ネットにとってこの時が最初の現地での活動。幕末の古文書や戦時中の帳簿など地域の歴史を物語る資料が残されていた。これらを建物の外に運び出して、必要に応じて応急処置を施した。文化財レスキュー事業では国立文化財機構の文化財防災センターが中心となってレスキュー隊を立ち上げている。「いしかわ史料ネット」はそこに参加している団体の1つ。先月には「被災文化財を救え!」という漫画を公開。実例をもとに資料保全の大切さを呼びかけている。漫画と漫画で紹介された書を紹介。
地震や水害で被災した歴史資料などを後世に残す活動について。資料ネットの大事な取り組みが、災害が起きる前の備え。例えば「宮崎歴史資料ネットワーク」は隣の「鹿児島歴史資料防災ネットワーク」に呼びかけて2018年から共同で図上訓練を行っている。ある地域で大きな災害が起きた場合に、どのタイミングでどんなことを行うべきなのか、自治体の職員などを交えてシミュレーションをする。救出した資料の応急処置の方法についても一緒に考えるという。宮崎県では去年8月に最大震度6弱の揺れを観測したし、今月13日には震度5弱を観測する地震があった。できるところから少しずつでも備えを進めてほしい。神戸の資料ネットの設立当初から活動に携わってきた歴史資料ネットワーク・奥村弘代表委員(神戸大学理事/副学長)は“まさか30年続くと思っていなかった。それだけ各地で災害が起き活動が長期化、恒常化した”とこれまでの活動を振り返っている。そのうえで資料ネットを都道府県ごとに設けるなど活動をさらに広げていくことや、自治体の文化財担当者などと顔の見える関係を作るといった日常の活動の大切さを訴えていた。いったん大きな災害が起きると、被災地では歴史遺産が一気に失われるおそれがある。地域の歴史の継承が難しくなってしまうということにもなりかねない。資料レスキュー活動の30年はそうなってはならないと各地で実践を重ねてきた歴史と言えると思う。多くの人の理解や協力を得ながら地域に根ざした取り組みをこれからも続けてほしい。
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- 奥村弘
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