- 出演者
- 桑子真帆 カライスコス・アントニオス
オープニング映像。ネットで安いと思って注文したら、定期購入になっていたり、解約できなかったりする人たちが増えている。消費者を意図しない買い物へ誘導するウェブデザインはダークパターンと呼ばれ問題となっている。
消費者が不利な判断に誘導されてしまうウェブデザイン「ダークパターン」、OECDは7つのパターンに分類し、消費者被害を引き起こす可能性があるとして実態調査をはじめている。だは日本の法律では違法とされておらず、9割のアプリで使われているという。
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ダークパターンで知らないうちに損をしていまったという50代の久美子さんは去年、子どものために通販サイトで化粧品を購入しようとした。半額だったので1個試してみようと購入したが、購入後に定期コースに申し込んだことになっていた。定期という言葉はボタンを押すと表示される場所とサイトの下の方に小さな文字で表示されていた。久美子さんは商品を受け取れないと会社に伝えたが、会社側は記載があったとして受け取らない場合は返品手数料を請求するとした。久美子さんは定期コースで追加の2本を購入し9000円を支払った。このサイトのデザインについて複数の専門家がダークパターンにあたると指摘している。定期購入のトラブルは急増していて、去年の相談件数は9万8000件ほどで10年間で50倍に増加している。
専門家と協力し、架空のショッピングサイトを用いた実験を行った。参加者にはふだんと同じように買い物をしてほしいと伝えた。サイトに仕込まれた1つ目のダークパターンは「焦らせて購入を促す」。30人中17人が在庫残り1個と表示のあったパソコンを購入した。次のダークパターンは「定期購入を事前選択」。事前の選択を見落としてしまった人、無意識に受け入れてしった人など4割が定期購入してしまった。次のダークパターンは「解約が難しい」。ホーム画面には解約の文字がなく、解約画面が英語表記にすると9割の人が解約できなかった。ダークパターンを研究しているシーボーン准教授は年齢・性別に関係なく誘導されていたことが分かったという。知らないうちに消費者が損をするおそれがあるダークパターンはなぜ広がっているのか?ダークパターンを使っているウェブデザイナーはデザインで消費者を誘導することを求められるという。成果を上げたダークパターンは模倣されて撹拌され、ネットビジネスでは欠かせなくなってきているという。
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ダークパターンは日本ではほとんどが違法とはなっていない。専門家は日本の消費者を守る法律の状況は包括性がやや欠けているのが現状だと指摘、ダークパターンごく一部だけが規制されているのが実情だという。クーリング・オフは使える場面が限られていて、通信販売では使えない。通販販売の場合は自分で広告をみて確認した上で申し込んでいるためクーリング・オフは必要ないとされている。ダークパターンから身を守るためには、疑う力を高めること、証拠を残すことが必要。
去年6月、アマゾンがダークパターンを使い有料会員に誘導したとして、規制当局FTCから訴訟を起こされた。アメリカのアマゾンでは「有料会員になって無料配送をしてもらう」というボタンが強調されるデザインになっていた。退会手続きには少なくとも6回クリックが必要になっていた。FTCはサイトのデザインが欺まん的行為を禁ずる法律に違反していると主張。別のケースではFTCが消費者の被害を救済できた事例もある。訴訟相手はインターネット電話の企業。おととし、顧客の解約を不当に妨害していたと訴えた。解約方法を電話に限定したり、高額な手数料を設定することで約40万人が被害にあったとされている。企業はFTCと和解し、被害者に総額1億ドルを返金することになった。
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ダークパターンを規制する動きは広がっている。EUでは利用者を欺くデザインを禁止、韓国では来年から特定のダークパターンを禁止、インドでは去年規制のガイドラインを発表した。日本の消費者庁はダークパターンを包括的に規制することは難しい、悪質なケースに関しては取り締まりを強化しているとしている。企業にアンケートをしたところ、ダークパターンの定義はあいまいな点もある、自主規制のみでは対策を講じる企業が不利益になる、法整備やガイドラインが必要などの意見があった。
今年2月、ダークパターンを取り巻く国内外の状況について学ぶ企業向けセミナーが開かれた。企業の担当者約100人が参加。ダークパターン対策がブランド力を高めると考える企業もある。飲食店予約サイトを運営しているIT企業では、以前の予約画面は会員登録を必須とするものだった。そのサイトを去年、登録なしでも予約できる仕組みに変更した。さらに、残り席数を表示するデザインを検討していたが、表示しないことにした。見直したサイトのデザインはユーザーに好意的に受け入れられているという。会社ではダークパターンを使わないことは顧客の信頼、会社の成長につながると考えている。
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消費者が不利益になるダークパターンを減らすためには、ロゴマークや認定マークを使って企業がダークパターンを使わないために具体的措置をしている場合にそれを可視化すること、リストを作ることなどの対応が考えられる。消費者が嫌な思いをした場合に発信しがちだが、良い点も発信して情報として共有していくと企業側にもメリットになるという。