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オープニング映像。
北海道旭川市に住む菱谷良一さんは現在101歳。1921年に旭川新聞の記者をしている父親のもとに生まれた。旭川師範学校に入学した菱谷さんは美術部員として絵を描く日々に明け暮れた。時代は軍国主義の真っ只中。ただ日常生活をありのまま絵に表現し創作活動を行っていた菱谷さんはある日突然「思想犯」の烙印を押され逮捕された。
1941年、身の回りの生活をありのまま描く生活図画が治安維持法に違反しているとして美術部の学生や教師ら26人が逮捕された。これが生活図画事件である。1925年に施行された治安維持法は当初、共産主義の日本への流入を取り締まるための法律だったが、徐々に解釈が拡大。菱谷さんが描いた絵画は学生が本を片手に話し合っている場面を切り取ったものだったが、警察はそれを共産主義について話し合っている様子だと決めつけ、菱谷さんを恫喝した。不当に思想犯に仕立て上げられた菱谷さんは獄中生活を送ることになった。
戦前の思想弾圧「生活図画事件」。不当な投獄は1年ほど続き、その間、一切の娯楽を取り上げられ氷点下の中暖房器具も与えられない生活を送った菱谷さん。心の支えは一緒に投獄されていた友人との交流だったという。逮捕から約1年3か月後の1942年12月、菱谷さんは保釈されたが、懲役1年6か月執行猶予3年の有罪判決を受けた。その後兵役についた菱谷さんは終戦後就職し結婚。子供や孫に囲まれ平穏な生活を送り、生活図画事件については言及せず暮らしていた。
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写真家の高橋健太郎さんは生活図画事件の被害者がまだ存命だと聞きつけ、旭川市へ。菱谷良一さんの姿を被写体として収め続けている。高橋さんは菱谷さんを撮り続ける理由について「改正組織犯罪処罰法」を挙げた。改正組織犯罪処罰法には「共謀罪」の趣旨を含む「テロ等準備罪」が新設されている。これが一部で「治安維持法の再来」ともいわれており、言論や思想統制につながるのではないかと懸念されている。高橋さんは生活図画事件の過ちを繰り返さない社会になるよう願っていると語った。
生活図画事件で菱谷さんと支え合った無二の親友・松本五郎さんが2020年に死去。告別式に出席した菱谷さんは辛かったことも含め松本さんとのあらゆる思い出を思い涙した。
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- 札幌市(北海道)
生活図画事件の唯一の生き残りとなった菱谷良一さん。国は未だ治安維持法について被害者に謝罪も賠償もしていない。菱谷さんは毎年5月に国会請願に参加し国に謝罪と賠償を求め続けている。
エンディング映像。