2025年2月26日放送 23:30 - 23:40 NHK総合

時論公論
ホンダ 日産統合撤回 帰路に立つ日本の自動車産業

出演者
井村丈思 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

時論公論
ホンダ 日産統合撤回 帰路に立つ日本の自動車産業

ホンダと日産が経営統合に向けて本格的な協議に入ったのは去年12月下旬。持株会社を設立しその傘下に両社が入る形を目指していた。規模を活かし効率化、競技力向上をし実現すれば年700万台超の巨大グループが誕生するはずだった。しかしわずか1ヶ月半後に両社は協議の打ち切りを発表。打ち切りの流れを決定づけたのは、協議の中でホンダが経営の主導権を握るという、当時の持株会社化を目指すのではなく、日産を完全子会社化する案を打診した。日産は統合について内田社長がどちらが上、どちらが下ではないと強調し、子会社化の提案は到底受け入れられないと社内で反発が広まり、両社の溝は埋まらなかった。協議の中では、統合の前提条件だった業績不振の日産の経営の立て直し策についてホンダ内部では日産の意思決定が遅いとの不満が広がっていたという。しかしそれでも破談を覚悟の上で日産の子会社化を提案した理由に三部社長は、スピード感というキーワード。持株会社方式が、時代が求めるスピード感に対し十分に機能しない。厳しい判断が迫られると直前で判断のスピードが鈍る可能性が否定できないと説明している。SDVは、ソフトウェア・デファインド・ビークルと言う意味で、ソフトウェアで定義される車をさす。車に搭載されたソフトウェアが外部との通信により、まるでスマートフォンのように、更新され車を買い替えなくても走行性能や安全機能などをアップデートできる仕組み。日本ではまだ浅いSDVだが世界をみわたせば、米中の新興メーカーがここ数年商用化が進みつつある。テスラの車には標準装備として、蓄積した走行データを利用しソフトウェアが更新される機能が。安全せや省エネの性能を高めるなどのサービスが導入されている。業界では将来的に自動運転の高度化や映画などのエンタテイメント。社内で赤ちゃんの鳴き声を検知すると子供が喜ぶ音楽を再生を提案するなどといったいろいろなサービスがSDVで提供できる。こうしたSDVは巨大市場はアメリカと中国で徐々に浸透し始めているが、5年後の2030年頃には急速に普及し10年後の2035年には日本を含め世界で生産される新車の66%あまりがSDVになるという予測がある。これに伴い、自動車メーカーの収益も、車を売り切っておしまいではなく、車のソフトの更新に伴うサービス業も柱の一つになっていくと見込まれる。

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市場の急拡大がみこまれるSDVに日本はどう対応するのか?その指針となるのが政府が去年打ち出した新たな戦略。戦略では、米中の新興メーカーがこの分野で先行し日本の出遅れが指摘されている背景を分析。その一つが、ソフトウェアの重要性が高まる中で、これまでに自動車メーカーが主導してきた産業構造が変化し、ソフトウェアのサービスや半導体などの部品を手掛ける企業の、存在感が高まっている。日本の自動車各社が強みとしてきたハード面で部品メーカーなどとの釣り合わせの技術が結果的に開発に時間がかかり、大幅な設計の変更がしにくい側面があるのに対し、しがらみのない新興メーカーのほうがより素早く効率的に開発でき、革新的な商品に経営資源を収集できることを指摘。そのうえで戦略ではこうした変化の対応策としてソフトウェアの標準化などの分野で、日本のメーカーの連携の強化を促しすことや車向けに特化した、高い性能と省電力を兼ね備える半導体の研究支援。自動車の知見あるソフトウェア開発人材の発掘・育成などを進めるとしている。そして個々のメーカーの取り組みを踏まえ、2030年には世界で販売されるSDVのうち日本メーカーが占める割合を3割りにまで高める目標を掲げる。日本の自動車メーカーも、SDVに関連する取り組みを強化する方向性を打ち出している。このウチ大手の間では、トヨタ自動車が今年車載用の基本ソフトを世界で展開する車に搭載する計画の他に、AIを活用し事故を防ぐための運転支援技術の高度化に向けてNTTと協業で取り組むとしている。ホンダは、来年から世界で展開するEVに自社開発の基本ソフトを搭載する計画で、SDV専用の半導体をルネサスエレクトロニクスと共同開発。日産は基本ソフトの開発の他に、SDV領域でホンダと共同研究をする。政府は戦略の中で各社とも多くの車種を抱える中で、SDVの開発に必要な資金や人材を十分に振り向けできにくい部分を課題と指摘している。また専門家の間からは、SDVの商業化には、従来の車作りに巨額の投資や収益性を高めることへの規模の確保の重要だとの見方もある。世界の自動車グループの販売台数でホンダと日産は去年8位9位となり中国の新興メーカーのBYDに初めてぬかれた。統合協議が白紙となったいま、車の知能化や、電動化の流れの中でどのような成長路線を描けるのか、両社は戦略の見直しを迫られている。とりわけ日産は今年度の決算で800億円の最終赤字になる見通しで、経営の立て直しにむけて世界の生産能力の20%の削減などを柱とした具体策を示しているが、内容が踏み込み不足という指摘があり、来月をめどに追加の対策を公表する。また日産に台湾の電子機器メーカーのホンハイ精密工業が関心を示しており、新たな提携先探しの中で今後焦点となる。

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(エンディング)
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