2024年6月25日放送 4:05 - 4:15 NHK総合

視点・論点
脱・低賃金社会について考える

出演者
 - 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

(視点・論点)
脱・低賃金社会について考える

1990年代までの日本は国際的競争力があり、日本的企業、日本的雇用が世界的に高く評価されていた。ところがその後日本は30年にわたって賃金水準が上がらないという不思議な展開を遂げているという。賃金水準の推移を国際比較すると1991年から2022年までのG7カ国のうち、日本は一番下。賃金上昇をしている国が多い中で日本だけ賃金水準が低いまま。日本人はこの30年間収入が実質的に増えない中で生活してきたといえる。日本ではこれほど賃金があがらないのか?日本がこの30年間政策的、意図的に現場で働くひとにできるだけお金を回さないようにする仕組みを作ってきたからで、それには3つの方法がある。1番目は企業などが賃上げにより人件費削減を重視し賃上げをしないまま、働く時間を長くしたため。1990年代に、英米初の 新自由主義が世界的に影響を拡大していた時期に日本ではバブル経済が崩壊し不況が長期化した。日本企業は生き残りをかけて人減らしや人件費削減に邁進した。賃金や賞与はおさえられ、起こった数少ない人員で長時間労働やサービス残業を行うのが日常になった。ハラスメントや精神疾患が増えてブラック企業や過労自殺と言った言葉が広がり、2022年には33年ぶりに賃上げ率が5%を超えると報道された。逆に言えば日本はその間企業の売上は伸びていた時であっても利益が働く人達に還元されることはなかったことになる。2番目は人を安く使えるように30年間で非正規雇用が大きく増えた。非正規割合の推移では、非正規雇用・非正規とはパートやアルバイト、派遣社員などフルタイム正社員とは異なる区分で雇われる雇用形態をさす。1980年代には10%台だった非正規雇用はその後4割近くまで増加した。女性の場合は更に多く4割近くが非正規となっている。現在も非正規は労働は4割近くで高止まりしている。非正規が増えると低賃金社会になるか?その理由は非正規になると昇給がなく最低賃金の低い時給がずっと支払われることになる。年齢別の平均賃金では正社員は右肩上がりに上昇しているが、非正規・パート・アルバイトの賃金は年齢に関係なく低いまま。歴史的にみるとこうした非正規は1970年代以降小売業や飲食業で働く主婦パートや学生アパートで拡大している。当時は夫、父親が一家の大黒柱として稼いでいるので女・子どもはお小遣い程度の賃金でいいと考えられていた。しかしその後バブル経済が崩壊し日本的雇用が揺らぐなかで企業は安く使える非正規を人件費削減を有効な方法として拡大していった。その結果今ではスーパーマーケットや外食チェーンで働くひとの8割から9割は非正規になった。

2000年代以降にはさらに工業サービス分野にも非正規が大きく広がった。規制緩和、公務員削減など、専門職の多くが有期契約の非正規になった。保育士や介護職員など私達が頼っているエッセンシャルワーカーの多くが人件費削減のもと非正規に変わった。3番目は委託や下請けで働く人の低収入化。請負や下請け仕事は従来からあったが、1990年代以降い規制緩和や自由化され低価格競争などの新しい局面がうまれた。建設業や運送業にみられるように、市場で強い力をもつ発注者などはよりやすい値段を提示しするようになり、結果として中小零細企業や個人事業主、フリーランスなど、多くの人々が低収入を強いられるようになった。しかしこれらすべては一つの論理で貫かれている。それは人を安く、都合よく使うことで、利益が増えて競争力が増すはずという新自由主義の考え方。人件費を削減することで競争力をあげる、この目標を達成するために賃上げがないまま長時間働く正社員、女性を中心とした低賃金の非正規。外部の委託請負仕事の買えたたきなどこれらが長期にわたって続いてきた。しかしこうした政策を30年間押し進めてきて本当に日本経済の競争力は上昇せず、日本経済の相対的位置は国際的に低下を続けている。現場で働いている人にお金を回さない政策を続けたことで日本の力はむしり弱められてきた。この30年の歴史はこの政策が間違っていたことを示している。

(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

© 2009-2024 WireAction, Inc. All Rights Reserved.