2025年12月16日放送 4:05 - 4:15 NHK総合

視点・論点
「日本版DBS」は性犯罪を防げるのか

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(視点・論点)
「日本版DBS」は性犯罪を防げるのか

筑波大学教授・原田隆之が「「日本版DBS」は性犯罪を防げるのか」について解説。2024年に「日本版DBS制度」という性犯罪確認制度が創設。この制度により学校や保育所など子どもと接する職に就く人について過去に性犯罪で有罪判決を受けていないかの確認が義務づけられるようになった。これはイギリスのDBS制度を参考にした仕組みで子どもへの性加害を未然に防ぐことが目的。内閣府の調査では若年層(16歳~24歳)の4人に1人以上が何らかの性被害に遭っている事実が明らかになっている。「日本版DBS」は学校などの事業者が職員を採用する際、同意を得た上でこども家庭庁を通し法務省に性犯罪歴の有無を照会する制度。犯罪履歴がある場合、その事実が通知される。事前確認を通じ、性犯罪歴のある人が子どもと接する業務に従事するのを防止することを目的としている。イギリスでは教育や保育の現場での安全性向上に資する対策として一定の効果が認められている。しかし性犯罪を大幅に減らしたと明確に示したエビデンスは十分ではなく、性犯罪者の再犯率は5~15%程度とされており、窃盗などよりも低い傾向にある。日本の性犯罪前科者の推移を見ても約9割が性犯罪の前科なしであることが報告されている。前科照会程度のみで性犯罪の発生を狡猾的に押さえることは困難であり、予防効果には限界がある。

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そのほかにも「日本版DBS」には構造的欠陥がある。第一に前科照会の対象が「有罪判決が確定したケース」に限定されている。第二に前科照会に義務づけられるのは一部の施設に限られており事業者の対象範囲にも限界がある。学習塾やスポーツ教室などは認定を受けるかは任意であるため全ての事業者に義務が生じるわけではない。一方、個人のベビーシッターや家庭教師・医療機関などは制度の対象外となっており、前科照会の仕組みが及ばない。このように対象が限定されている対策は性犯罪抑制に直結するわけではない。「日本版DBS」ができることは、過去に重大な性犯罪で処罰を受けた人の「教育・保育」現場への再流入を防止。事業者が安心して採用判断を行うための材料を提供。保護者や市民に対して一定の安全保障のメッセージを示すこと。一方、できないことは前科のない加害者による性犯罪を防止。家庭内や知人間の性犯罪を抑止。性犯罪の根本的な要因を改善することが挙げられる。前科照会はひとつの予防策にすぎず、それだけで犯罪を防げるわけではない。性犯罪を減らすためには他の治療的、教育的、組織的予防策など複数のアプローチをとることが重要。

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必要な補完策は「加害者治療プログラムの拡充」。「子どもと保護者への教育の充実化」。「職場内のガバナンス強化」。一方で、性犯罪の前科者へのプライバシーや人権を守ることも重要。DBS運用にあたっては子どもを守るという正義の名のもとに誰かの人権を侵害するということがないように注意する必要がある。ただこれだけで性犯罪を大きく減らせるだけではなく、前科照会だけではカバーできない領域が存在するため、加害者治療、防犯教育、組織的対策など多面的なアプローチが不可欠。「日本版DBS」は万能な解決策ではなく、複数ある安全対策のうちの一つとして理解することが大切。そして市民社会全体で性犯罪を減らすための環境をどう整えるかが今後の重要な課題となる。

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