- 出演者
- 合原明子 高坂晶子
円安の中、続々と日本を目指す外国人観光客。今、各地で新たなオーバーツーリズムとも言える事態が起きている。観光スポットとしては全く無名だった場所に突然人が殺到する現象が相次いでいる。さらに国内の旅行好きからは最近の宿泊費をめぐって戸惑いの声も上がっている。
オープニング映像。
山梨県富士吉田市にある商店街は連日、大勢の外国人観光客が訪れている。この商店街はもともとは観光スポットではなく閉店した店が目立つシャッター通りだった。突然、外国人観光客が押し寄せるようになった理由はインスタグラムの動画。地元の自治体によると人気が出るきっかけとなったのはSNSにアップされた1枚の写真。今も世界中の人たちの間でシェアされ続けている。しかし、突然多くの人が訪れるようになり地元の自治体は対応に追われている。市は今年3月に観光案内所を整備。車が少ない別の通りや他の絶景スポットを紹介するなど観光客の分散を図ろうとしている。富士吉田市富士山課課長・勝俣美香さんは、観光客もそういうところw整備すれば満足行く町になっていくでしょうし、などと話していた。全く無名の場所が突如SNSを通じて観光地になってしまう現象。
住民からの苦情が相次ぎ厳しい対策を取らざるを得なくなった場所も。5月に地元の自治体が黒幕の設置に踏み切ったことで注目された富士山コンビニ。このコンビニの写真は英語のハッシュタグまで作られ世界中の人たちの間でシェアされている。1年ほど前から人気が高まり大勢の観光客が集うようになった。ここは交通量の多い道路で事故につながりかねない行為が頻発してしまった。さらに狭い道に座り込んで食事をするなどのマナー違反も相次いだ。富士河口湖町立船津小学校教頭・櫻井順矢さんは、ちょっと声を掛けられたということも、などと話していた。今回の黒幕設置について町は観光客などの安全と平穏な住民生活を確保するため苦渋の決断で行ったとしている。ところが今、他のコンビニでも同じような状況が生じ始めている。富士山の麓ではこうした人気スポットが次々と出現。
観光地としては知られていない場所に観光客が押し寄せるという問題を高坂晶子さんは次世代型オーバーツーリズムと呼んでいる。山梨の商店街を訪れていた中国の若者は「中国ではシティウォークといって観光地ではない場所をこれといった目的を持たずに歩く観光スタイルが流行している」と話していた。次世代型オーバーツーリズムの対策は「事前の対応を想定しておくこと」「早く兆候を察知すること」。円安が進む中、急増しているインバウンド。国内の宿泊事情にも思わぬ影響が出てきている。
宿が高くて泊まれないとSNSに投稿していた20代の女性。趣味は旅行で半年に一度は全国の観光地を回ってきたが、今年の夏休みはどうするか悩んでいるという。現状、予算に収まる宿泊先が見つからず日帰り旅行にすることも検討しているという。
観光地の宿泊料金はこの1年でのきなみ上昇している。この1年で宿泊料金が平均して2割以上高騰した神奈川・箱根町。5万円台を中心に22の部屋がある旅館はこの春、外国人の宿泊客は全体の8割に達したという。旅館では人件費や食材費などの高騰を受けこの1年で1万円ほど値上げしたが高い部屋から予約が入っていくという。松坂屋本店女将・牧野文江さんは、ここまで満室が毎日続くような状況になるとは考えていなかったと話していた。さらに1泊40万円ほどの部屋に外国人観光客からの予約が次々と入るという旅館も。金乃竹 仙石原支配人・北村絵里さんは、インバウンドの客は連泊される傾向がある、好評頂いていますと話していた。1年ほど前は2割ほどだった稼働率が今は7割にまで上がっている。宿泊需要をもとに最適な市場価格を分析している会社では円安にも支えられた外国人観光客の旺盛なニーズが宿泊費の上昇を後押ししていると見ている。メトロエンジン営業部長・宇田川和久さんは、今後しばらく宿泊施設の価格は上がってくる傾向になるかと思う、等と話していた。
日本総合研究所主任研究員・高坂晶子さんによると、今こそ見直すべきは「日本人の休み方」。高坂は日本人の休みは特定の時期に集中しているということが言える、年末年始、夏休み、GWに集中する、こういう時期に旅行しようとすると宿泊費、移動費も高くなるので、快適な旅行とは言えない、分散をしてくことが大事、などと解説していた。
東京・中央区にある築地場外市場。日本の台所と呼ばれた築地市場の伝統を引き継ぐこの場所にも今、多くの外国人観光客が訪れている。大正時代から続く水産卸売会社・北田水産の北田喜嗣さんは今、町が変質してしまうことを懸念している。コロナ禍でできた空き店舗に外国人観光客をターゲットにした店が次々と出店。通りに食事をするスペースを設けたり派手な看板を設置したりする店が出てきているという。それぞれの店が築地ブランドを意識し切磋琢磨してきた伝統をどう守っていくか。北田さんを中心とした事業者たちは今年4月、店を構える際のガイドラインを作った。安心して買い物ができる環境を維持するため客引きや通りに備品を出すことなどを禁止。さらに街の調和を守るために連続性を意識したデザインを採用することなどを求めた。今、築地の町並みは少しずつ変わり始めている。外国人にも人気の魚屋は客の呼び込みにひと役買っていたショーケースを混雑を生む要因の一つになっているとして撤去。ホテルは黒いシックな外観を築地のイメージに合っていないとリニューアル。木材を利用したデザインに変更した。
日本総合研究所主任研究員・高坂晶子さんが解説。オランダのアムステルダムではかなり前から市街地の観光地化が進んでしまって街並みや古いお店が失われてしまったということで問題となった。また住宅が観光施設に変わるために住民が立ち退きを迫られるというようなことが問題になったこともある。アムステルダムの場合は今年から観光客向けの土産物店は中心地外地には新規出店できないという。高坂晶子は、日本が目指すべきは観光に消費されないまちづくりだと提言していた。
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- アムステルダム(オランダ)
外国人観光客でにぎわう京都、錦市場。ここでイベントを開催した都内在住のツーリストシップ・田中千恵子さん。伝えているのはスポーツマンシップならぬツーリストシップ。旅先への配慮や貢献、交流を楽しむことなど地元の人から好かれる旅行者になるための心構え。自らも旅行が趣味の田中さん。学生時代に観光客を見る地元住民の複雑な感情を肌で感じたのが発案のきっかけ。この日、田中さんは千葉県から京都に修学旅行に来た中学生たちにツーリストシップについて伝えた。講義の後に向かったのは外国人観光客でにぎわう錦市場。今度は地元住民の立場で旅先のマナーを伝えてもらった。
カールさんとティーナさんの古民家村だより、ヒューマニエンス、ワイルドライフの番組宣伝。