- 出演者
- 首藤奈知子
戦後81年のこの夏、実際の戦場体験を描いた水木しげるの漫画を上映するイベントが人気を集めている。水木しげるは生前、戦地の実態を独自の表現で描き多くの戦記漫画を残した。水木しげる亡き今、アニメ業界の第一線にいる制作者が思いを受け継ごうと動き出している。
11年前に93歳で亡くなった水木しげる。多くの作品の中で3度も漫画にしたほど思い入れが強かったのは白い旗の物語だった。舞台は日米の激戦地・硫黄島。日本軍の兵士たちは厳しい戦況の中でも降伏を許されず死ぬまで戦うことを命じられていた。今回のアニメ制作にあたり業界の第一線にいるプロフェッショナルたちが集まった。監督を務める佐藤千春さんは戦記アニメの制作は初挑戦。まず取り組んだのはリアリティーを生み出すための徹底したリサーチ。専門家の協力を得ながら細部にまでこだわって情報を集めた。登場人物のキャラクターデザインにも気を配った。原作では劇画タッチで描かれた人物を若い世代にも見てもらいたいと親しみやすいデザインにした。数千枚に上る作画の多くは手書きで行なっている。
1943年、21歳で陸軍に徴兵され入隊した水木しげる。送り込まれたのは南太平洋の最前線・ニューブリテン島だった。敵の奇襲で所属していた分隊は全滅。奇跡的に一人だけ生き残った。長年水木しげるを取材したノンフィクション作家・足立さんは戦記漫画の原点にあるのは軍隊で感じた強い憤りだと指摘する。生きるという選択が許されない経験が作品にも強く反映されている。戦記アニメで背景画を担う小倉さんは当時の兵士が目にした硫黄島をリアルで描くため普段は使わない色の組み合わせも試すことにした。一方、激しい戦場にもあった自然の美しさはできるだけ表現しようとした。編集の現場でも試行錯誤が続いていた。スタジオジブリ作品など数々のヒット作に携わってきた瀬山さんが追求したのは間の取り方。暑さと渇きに苦しみながら作業した兵士たちの息遣いを表現できないかと考えた。瀬山さんは20代のときに働いていた建設現場の同僚に硫黄島からの生還者がいたという。「あのおじさんの思いがこの作品の中に生きたらいいなと」などと語った。
野沢雅子がアニメで演じるのは主人公のひとり、湊水兵。死ぬまで戦うか、生きて帰るか、気持ちが揺れ動く作品を象徴する役。野沢は「悲しくなる。自分だったらどうだろうと読んでいて思う。でも答えは出せない。」と語った。水木しげるは作品にどういう思いを込めたかという質問に、「先生の経験をご自分の中に締まってあるのだけど、ここが大事だというときに出されたような気がする、言葉として。」と答えた。
今回のアニメには原作にないキャラクターが描かれている。戦争はどういうものなのかを“ガマ”が表現する。ガマ(蝦蟇)は生き物の生気を吸い取る妖怪。監督の佐藤さんは、「憎しみ、恨みなどの中でどんな人も追い込まれれば変わってしまう。そういう表現、比喩的な感じ。だからといってガマを悪者にする意図は全然ない」と語る。戦時中の空気に飲まれそうになる葛藤を水木さん自身も出生前の手記に記している。佐藤さんは「ガマになっていくさまを見た人が意味を考えてもらいたい」と語る。
野沢さんは時代の空気のなかでガマになってしまう人間について、「本当はあの時代だったら、帰ってはだめなんですよね。でも私は100%ではないと思います。」と話した。いまの社会に向けてどういうことを伝えたいかという問いに、「平和という言葉を誰しも忘れないで、どこかに常に残してほしいですよ。平和って易しそうで難しいじゃないですか」などと話した。
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戦争とかは何かを問い続けてきた水木しげるさん。そのメッセージを伝える活動を長女の尚子さんが続けている。尚子さんは、「水木は戦争反対って言わないんです。戦争ってどういうものなのか、自分の頭で考えるいい機会にしてもらえたらいいなと思います。」などと話した。アニメの完成予定は秋。
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