2024年2月15日放送 0:42 - 1:32 NHK総合

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驚異の庭園 〜美を追い求める 庭師たちの四季〜

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足立美術館の日本庭園はアメリカの日本庭園専門誌のランキングで毎年1位を獲得している。際立った美しさを放つ晩秋の庭を作り上げるまでの1年に密着した。

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足立美術館
驚異の庭園 美を追い求める 庭師たちの四季
足立美術館

島根。安来市古川町の足立美術館には、日本画の大作と日本庭園を目当てに国内外から年間45万人が訪れる。苔庭の奥には枯山水庭が広がり、人工の庭が自然の山々に溶け込んでいた。白砂青松庭のモチーフは横山大観「白砂青松」。亀鶴の滝も大観の画を模して人工的に作ったもの。大観作品のコレクターとして知られた実業家の足立全康が1970年、生まれ故郷の自然を背景に大観の日本画の世界を再現しようと試みた。山裾まで続くかのような庭園には横長の植林帯があり、奥の道路や田んぼを見せない舞台装置となっている。足立全康は窓枠で庭を切り取ることで立体絵画のように楽しめる仕掛けも導入した。この日本庭園はアメリカの日本庭園専門誌「スキヤ リビング マガジン」が主催するランキングで2003年以来連続第1位の評価を獲得してきた。足立美術館専属の庭師たちが庭園を守ってきた。

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2022年11月秋

2022年11月秋、足立美術館庭園部の密着を開始。部長だった小林さんが定年退職を数日後に控えた朝、突然の暴風が庭園に紅葉を撒き散らした。朝7時半を過ぎてたが、庭園部の庭師たちは開館の9時までに庭の掃除を完璧に済ませた。小林さんの退職後に課長の永島が率いる庭園部は5人となった。1年後の紅葉の季節に向け2000本の樹木の手入れをしなければならなかった。

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足立美術館
スキヤ リビング マガジン

日本庭園専門誌「スキヤ リビング マガジン」の編集部は森の中の一軒家だった。雑誌は出版して25年。編集長のダグラスさんは40年前に海軍士官として来日し、日本庭園に心打たれ雑誌を創刊した。37の国と地域で購読されている。定期的に日本の剪定技術を教えるワークショップも開催し、人の手が加わることで自然は一層輝きを増すという日本庭園の思想を伝えている。毎年12月に発表している日本庭園ランキングの審査員は、読者から選ばれた世界各地の専門家たち。1位に100点、2位に99点と各審査員がつけた点数を合計し歴史や知名度を問わず順位を決める。チェコで造園会社を経営する審査員のパベル・チーハルさんは、30年前に日本を訪れた際に日本庭園に魅了された。パベルさんは「一つの洗練された世界にいるようで本当に落ち着きます」「まるでめい想をしているような感覚を味わえるのです」と話した。

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桂離宮

日本庭園の一つの集大成である桂離宮は八条宮家の別荘として造影されてから400年、創建当時の姿を今日に伝えている。日本庭園の最高傑作として海外でも知られ、ランキングでは毎年2位。足立美術館と人気を二分している。桂離宮では造園会社は毎年入札で決まる。筆頭庭師・亀井さんは宮内庁に採用された技官で、毎年顔ぶれが変わる庭師たちに桂離宮の庭造りの流儀を伝えている。冨永さんは弟子で、1人の師匠に1人の弟子がつくことで技を伝授していく。御幸道の両側にはかつてスギゴケが生い茂っていたが徐々に姿を消し、現在はわずかしか残っていない。今は黄緑色のハイゴケが一面を覆っていたが、このところはハイゴケすら枯れてしまうことが多くなった。福井県立大学の大石教授の調査によれば、京都市内の20の苔庭のうち14の庭でコケが消えるなどのダメージが確認されたという。都市化の進行によるヒートアイランド現象が主な原因とみられている。

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2023年1月冬

2023年1月、足立美術館では雪が庭の形を覆い隠していた。庭園部の庭師たちは樹木を守るため雪おろしに励んだ。足を踏み入れると足跡として残ってしまうため、庭師たちは後戻りしながら消していった。しかし表面の雪が溶けたことで足跡が表にさらされてしまった。

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足立美術館
2023年4月春

2023年4月、雪おろしの甲斐があり足立美術館の庭園ではツツジやサツキが花を咲かせていた。庭師たちは紅葉の季節に向け2000本の庭木を剪定していった。まずはクロマツの芽を指で折って取り除いていった。春に芽をリセットすることでコンパクトなサイズに留めることができる。花が落ちたタイミングで低木の剪定も始まった。

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桂離宮

桂離宮には球形の低木はなく、亀井さんはツツジの低木を自然な形に整える。枝葉の重なりをコントロールし奥が透けて見えるのは、宮廷庭園の庭師たちが受け継いできた「御所透かし」と呼ばれる技。弟子の冨永さんは亀井さんから御所透かしの技を受け継ごうと格闘していた。

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桂離宮
オレゴン州立刑務所

オレゴン州立刑務所では、自然に触れ合うことで更生を促せるのではと5年前に日本庭園が造られた。受刑者たちが生き物の世話や庭の手入れを行っており、庭ができてから争いごとが減った。この庭園を設計した庭園デザイナーの栗栖さんは造園を学んだのち29歳で渡米し、今は刑務所以外にも病院など心のケアが必要な人々のための庭造りに力を入れている。栗栖さんが手掛ける日本庭園は「Japanese Healing Garden」と呼ばれ、アメリカで需要が高まっている。

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2023年7月夏

2023年7月、足立美術館では背の高い木の剪定が行われた。初日は夏の到来を告げる風物詩として地元メディアも詰めかけていた。まずは建物沿いのアカマツの剪定から。客に近いアカマツは葉をすいて奥が見えるようにする。離れたアカマツほど葉のすき具合を少なくして濃く仕上げ、庭が山に溶け込む緑のグラデーションを作っていく。作業中雨が振り出すと、若い山本さんの剪定に狂いが生じ始め中断を余儀なくされた。8月には植林帯のアカマツの剪定が始まった。

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アカマツ足立美術館
観月会

10月、桂離宮では夜の庭で月見を楽しむ観月会が行われる。亀井さんと冨永さんは月見客を迎える準備を進めていた。亀井さんは月波楼で月見客の目線に立ち、アラカシの剪定を指示した。観月会当日は雨が降り足元が悪い中での開催となったが、月波楼からは雲間の月を見ることができた。

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2023年11月秋

足立美術館ではすべての樹木の剪定を終え、2023年秋を迎えた。庭を愛でる客たちは整えた庭師たちの存在に思いを馳せていた。庭には数年に一度という七色の虹がかかっていた。12月にランキングの速報が届いた。足立美術館は21年連続1位の期待に応えることができた。

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(エンディング)
エンディング

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