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オープニング映像。
秋葉原では老朽化が課題だった電気街を超高層ビルに建て替える計画が浮上。今、全国各地で都市、街の再開発が相次ぐ。これまでにない発想で挑戦する地域も台頭している。
国の研究所の推計では2056年には日本の人口は1億人を下回るという。縮小していく日本でどのようなまちづくりが求められるのか、3人の専門家とともに考えていく。
23年6月、福岡市に外資系の高級ホテルなどが入る高層ビルが開業した。高島宗一郎市長は「建て替えが進んでいないと、企業誘致するにしても呼ぶことができる企業が制限されてしまう」と話す。独自の税制優遇策などもつくり、アジアの国際ビジネス拠点を目指している。福岡は投資対象として海外から注目を集めるようになり、2040年までに人口増加を見込んでいる。市長は「地元で人生の自己実現ができないという状況をなんとか変えたい」と語った。
東京の湾岸エリアには44階建てのオフィスビルがあるが、空室が目立っている。コロナ禍以降、オフィス需要の構造変更が起き、都心のよりコンパクトなオフィスに移転する企業もある。高層ビルの建設はリスクとして顕在化している。
国の制度で、高層化による再開発を進めているのは全国で171地区。その1つは福井市だが、駅前の再開発工事が遅滞していた。地元の地権者たちは将来を見据え、高齢者向けの住宅を計画の中核にしていたが、世界的に資材価格が高騰。事業費を抑えるため、高齢者向け住宅を断念し、より収益性の高い分譲マンションに変更した。先月、藤井裕氏ら地権者たちの事業は1年以上遅れ、起工式を迎えた。
再開発事業が認可された129地区にアンケート調査を行うと、半数以上が費用工面のため、国から追加の補助金を活用すると回答。資材価格の高騰などにより、高層化による再開発という手法が成り立つ地域は限られるかもしれないという。
コロナ禍以降、オフィス需要が低下する一方、建設費が高騰。野澤千絵教授は「人口減少を迎え、床の需要が減っていく時に高く、大きく作らないと成り立たない事業そのものが限界かなと感じる」と語った。劇作家の平田オリザ氏は秋葉原の猥雑さ、混沌さが再開発で失われることは勿体ないと感じ、「風情とかを残した再開発ができるかどうか」と述べた。中空麻奈氏は福岡のケースを振り返り、コンパクトで人材は豊富など潜在性があり、高層ビルの再開発を行うのに適しているが、全部の地域が福岡と同じわけではないと話す。経済合理性を重視しつつ、その土地に生きている人々の生活、住みやすさなどを考慮に入れて最適解を見つける必要があるという。
4年前、三ノ宮駅周辺でタワーマンションの新築を規制するという条例がつくられた。阪神・淡路大震災で神戸市では水道などのインフラが大打撃を受けた。神戸市郊外では人口減少が著しい。今、三ノ宮は商業施設、オフィスを整備し、郊外の駅周辺を多様な世代が生活できる場としてリノベーションする計画を立案。名谷駅では老朽化した駅ビル、公共施設などのリニューアルを開始している。駅ビルには子育て、介護を担いながら働きやすい企業が入り、駅前の百貨店のなかには市立図書館がつくられた。久元喜造市長は人口減少を前提とした持続可能なまちづくりを目指していて、「私はあの世から荒廃した神戸の街をみたくない」と語った。
平田オリザ氏は「神戸では阪神・淡路大震災の後、コミュニティが寸断され、孤独死を生んだ。コミュニティが強いところは復興が強かった」と振り返り、神戸の持続可能なまちづくりに注目している。野澤千絵教授は「非効率な状態を広域調整、全体最適を目指したまちづくりを今こそ、考えるべきと思っている」とコメント。
東京・下北沢には新たな商業施設が誕生している。かつて、鉄道の高架化、大規模な再開発計画が浮上するたび、住民たちは反対運動を展開してきた。そこで、鉄道会社は再開発にあたり、どのようなまちづくりを目指すのか、地域住民たちと議論を重ねてきた。ある商業施設は1店舗あたりの面積を狭くし、賃料を割安にすることで個人のチャレンジを支えている。開発されたエリアの緑を育てる活動に取り組む団体の関橋知己代表理事は「自分の街に対して自分事になる」などと語った。
岩手・紫波町の駅前には役場、図書館などの公共施設、直売所や保育園が立ち並び、年間100万人が足を運ぶ。かつて、街が土地を購入したものの、財政難から手をつけられず、日本一高い雪捨て場とも呼ばれていた。再開発を主導した岡崎正信氏は最初にサッカーグラウンドを整備。さらに図書館、役場など普遍的集客装置の建設が決まってから、テナントを誘致した。入居するテナントは22にのぼり、空室は0。多様なテナントに魅力を感じ、親子4世代で引っ越してきた家族もいる。過疎化が進んでいた地域にもかかわらず、周辺地価は増加している。
平田オリザ氏は青春を過ごした下北沢の変化が感慨深く、前の街の雰囲気を残しながら活気づいているという。下北沢のように焦らず、慌てず、じっくり時間をかけて街の魅力を再発見し、多様性によってコミュニティーの力を再構築していくべきだという。野澤教授は開発事業に対して、デベロッパー、行政の目線だけで計画をつくるのではなく、早い段階から住民、専門家の方の多様な意見を取り入れる仕組みを整えるべきと提言した。都市も地方も心豊かに、国土全体で多様に暮らしていけることを考えていく必要がある。中空麻奈氏は「各地域にあったものを考えていけたら」などとコメント。平田氏は次の世代が挑戦できる雰囲気づくりの大切さを指摘した。
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