- 出演者
- 河野憲治
オープニング映像。
銃撃事件以降もトランプ氏は連日支持者の前に姿を現し、健在をアピールし続けている。トランプ氏が大統領に選ばえてから8年、アメリカでは繰り返し分断が指摘されてきた。国内の溝は修復不可能なほど深刻になり、アメリカの中にもう一つの社会を出現させている。アメリカ社会の根底にまで及び始めた亀裂の内実に迫る。
若者を中心に保守の理念を浸透させようと活動しているターニングポイントUSAの代表を務めるチャーリー・カーク氏は、愛国心に基づいた社会を築くべきだと訴えている。ターニングポイントUSAは全米に3500を超える支部を持つまでに発展し、トランプ氏が掲げるアメリカ第一主義に共鳴している。ターニングポイントUSAで活動するエグロフさんはリベラルな家庭で育ったが、次第に保守思想に惹かれアメリカ第一主義を一貫して掲げるトランプ氏の方がリーダーとしてふさわしいと考えるようになった。仲間との話し合いでは、バイデン政権のままでは経済的な不安が大きく将来に希望が持てないとの声があがった。ハーバード大学が若者に行った世論調査で、課題だと思うことの上位にはインフレや住宅問題などが並んだ。この調査では若者の民主党離れが進んでいることもうかがえる。2020年9月の調査ではバイデン氏に投票するとした若者は50%に達したが今年3月の調査では45%に減少。トランプ氏に投票するとした若者は26%から36%に増加した。
トランプ氏は大統領に就任したら実行するとして事実上の選挙公約を公表している。計画の一つは官僚の大幅な入れ替えを可能にすることだった。アメリカでは大統領が政府の要職につく人材を指名できる制度があり、対象は4000人。トランプ氏はその数を増やそうとしているとしており、5万人規模に及ぶとの見方もある。保守系シンクタンクはトランプ再選を見越して「プロジェクト2025」という計画を準備している。計画には大統領の権限を大幅に強める内容も含まれており、実行する官僚を育成しようとしている。プロジェクト2025に参加しているアルゲイオさんは、陸軍兵士としてアフガニスタンに派遣された経験から戦争に参加するか否かを決断する政治の役割は重いと考えるようになった。アルゲイオさんはウクライナにどこまで関わるか懸念しており、軍事支援に消極的で自国優先の姿勢を鮮明にするトランプ氏の政策を支えたいと考えている。ジョージタウン大学ドナルド・モイニハン教授は大統領の権限を過度に拡大することになり危険だと指摘しているが、プロジェクト2025はトランプ支持者の間で広がりを見せている。
河野キャスターはハーバード大学マイケル・サンデル教授に話を聞いた。サンデル教授は多くの人がエリート層から軽視されていると感じておりその不満がトランプ氏の支持につながっている、格差の拡大と成功に対する意識の変化が関係していると指摘した。90年代以降に民主党政権も市場を重視し経済のグローバル化を加速させた結果、工場は海外に移転し国内産業が衰退。格差の拡大が進み民主党は労働者の期待に応えられなくなっていく。さらにバイデン政権は気候変動対策を最優先にし石油産業を規制したことで人々の反発を招いている。サンデル教授はかつて民主党は権力者に対抗する大衆の党だったが今では共和党と立場が逆転したかのようだ、トランプ氏は民主党に投票してきた労働者を含む多くのアメリカ人の不満の代弁者になっていると指摘した。
トランプ氏が大統領に選ばれてから8年、熱狂的な支持者と反トランプ派が対立し分断を深めてきた。大手プラットフォームは対立を煽る過激な投稿への取り締まりを強化し、トランプ支持者による連邦議会への乱入事件後はトランプ派らのアカウントを凍結した。これにトランプ支持者は反発して独自のSNSを開設し、もう一つの言論空間を拡大させていった。社会の分断は独自の経済圏を築く動きにまで進んでいる。あらゆるものやサービスを購入できるプラットフォーム「パブリックスクエア」が急成長を遂げている。参加を希望する企業には自由と尊び小さな政府を目指すこと、中絶に反対し家族のつながりを重視することなど伝統的な保守の考え方を持っているか確認している。去年7月には設立からわずか1年余でニューヨーク証券取引所へ上場し、その場にはトランプ氏の息子の姿もあった。愛用していた大手スーパーに多様な性の尊重を呼びかける旗が増えているのを感じたことをきっかけにパブリックスクエアを利用するようになったシャーさんは、価値観を共有できて理念を押し付けない企業を支えることができると話した。
相容れない価値観を排除する動きも強まっている。共和党が強いインディアナ州の公立図書館では、10歳向けの本棚に置かれた思春期の主人公がゲイであることを受け入れていく葛藤を描いた作品に一部の保護者から「子どもに見せるべきではない」と意義を申し立てられた。今年1月には有害図書を提供した司書に罰金や禁固刑を課す法律が施工された。特定の本を禁止する動きは全米に広がり、アメリカ図書館協会のまとめでは異議申し立ての対象となった本は4200冊余。その多くが性的マイノリティーや人種差別、性的な内容が含まれる本となっている。その中にはアンネの日記もあり、アンネの性の目覚めなどが描かれた一部分が問題とされた。この動きを作っている「自由を求めるママたち」は保護者などで作る保守系団体で、保守系シンクタンクに資金援助を受けターニングポイントUSAとも連携している。こうした動きに危機感を見せる全米教育協会は、今回の選挙でもバイデン氏の支持を表明している。
河野キャスターが話を聞いた人の多くは、大統領選のあとも分断が続き修復は簡単ではないと考えていた。ある調査ではどちらの候補も支持しないという「ダブルヘイター」は4人に1人にのぼっている。ウィスコンシン大学キャサリン・クレイマー教授は次の大統領が異なる立場の人々に寄り添う姿勢を見せなければアメリカが再び一つにまとまる機会は失われると警鐘を鳴らしている。サンデル教授は自国の利益ばかりを優先するリーダーの台頭は民主主義の危機につながりかねない、この40~50年間説得力のある魅力的な選択肢を提供できなかった失敗を認識し主要政党がその使命と目的を再考する必要があると指定した。
エンディング映像。
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