2024年7月20日放送 22:00 - 22:50 NHK総合

NHKスペシャル
レスリング女子 新時代“最古の格闘技”をUpdate

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オープニング

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レスリング女子 新時代“最古の格闘技”をUpdate

エジプト・ベニハッサンに“人類最古の格闘技”レスリングを描いた壁画がある。古代オリンピックに採用され、向かい合った相手をどうやって倒すかの探求が数千年にわたって続いていてきた。その1つの到達点が“霊長類最強”の異名を持つ公式戦119連勝の吉田沙保里だった。日本女子は世界を席巻、金メダル獲得数はぶっちぎりの世界一。次なる世代の実力は吉田たちを凌駕し、史上初の全階級制覇も夢ではないといわれる。新世代の彼女たちが最古の格闘技のUpdateに挑む様子を追った。

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ベニハッサン(エジプト)吉田沙保里
レスリング女子 新時代 “最古の格闘技”をUpdate
レスリング女子 日本代表

去年9月にセルビアでレスリングの世界選手権が行われ、日本女子は10階級で6つの金メダルを獲得した。パリ五輪に挑む6人の平均年齢は22歳。5人が初出場というフレッシュな顔ぶれとなった。中でも世界的に実力が抜きん出ているのが軽量級の須崎優衣(50キロ級・25歳)と藤波朱理(53キロ級・20歳)。須崎は今回出場する中で唯一の五輪経験者。東京五輪では相手に1ポイントも与えず金メダルを獲得した。藤波は中学2年から公式戦133連勝、海外メディアから“ワンダーガール”と称される。レジェンド吉田沙保里も2人が金メダルに一番近いと称賛する。

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セルビアパリオリンピックレスリング世界選手権 2023東京オリンピック藤波朱理須崎優衣
53キロ級 藤波朱理

吉田沙保里の連勝記録を塗り替えた53キロ級代表の藤波朱理は代表最年少の20歳。特徴は技の多彩さ。その特徴が出たのが去年の世界選手権決勝だった。開始直後にタックル、相手の背後に回り込んで2ポイント獲得。レスリングでは相手の背後をとる・場外に押し出す・倒れた相手を90度以上回す・相手を背中から倒すなどでポイントが入る。開始1分でマットに這った状態から押し返して2ポイント。2分過ぎには膝をついた状態から左足で相手の右足をロック、相手の左腕を取って崩して背後を取り2ポイント。3分過ぎにはタックルに来た相手をかわして背後を取り2ポイント。4分40秒で10ポイント差をつけて勝利した。様々な技を繰り出すことで相手を圧倒した。ロンドン五輪の日本代表監督を務めた専修大学の佐藤満教授は「ここまで上手い選手はなかなかいない。守りの中からカウンターが狙え、距離感・間が本当に素晴らしい。安定感抜群なので質の高いオールラウンダー」などと評した。藤波は「いかに相手の力を出させなかったり、自分の力を出すかいうのを考えてやっている。次から次に枝分かれするみたいに先を予測しながらレスリングを組み立てていく。それができるよう体が勝手に動くよう練習を常にしている」と語った。試合中の藤波は手が常に相手の体に触れている。世界選手権の全5試合を分析したところ、その時間は93%。同じ軽量級の先輩・吉田沙保里は54%だった(ロンドン五輪・全4試合)。タックルを得意とした吉田はスピードをつけるため相手と一定の距離を取ることが必要だった。現役時代の晩年は海外勢に研究され、距離を詰められるようになった。タックル成功率はロンドン五輪では83%あったが、リオデジャネイロ五輪では60%に低下してしまった。藤波は相手と距離がない状態でどう技を繰り出すか突き詰めてきた。最重量級代表・鏡優翔と開いた祝勝会を取材していると、この日行われた男子大学生の試合を見始めた。鏡は藤波について、レスリングに対して一番向き合っていると称賛した。藤波は海外選手の動画も見て、試合会場でも他選手の試合を見て技のレパートリーを増やしている。「強くなるのに限界はない。吸収できるものは全て吸収していきたい」と語った。

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セルビアリオデジャネイロオリンピックレスリング世界選手権 2023ロンドンオリンピック新潟県
レスリングの壁画

エジプト中部の村・ベニハッサンにレスリングの壁画が描かれた墓がある。4000年前にこの地域を侵略者から守った総督が眠っているという。様々な形で組み合う220組は1つとして同じものはない。人類最古の格闘技は現在も探求が続いている。

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ベニハッサン(エジプト)
62キロ級 元木咲良

中量級・62キロ級でパリ五輪代表となったのが育英大学の元木咲良。藤波朱理が高校1年で優勝した2019年のインターハイ、初戦で対戦し1ポイントも奪えず完敗したのが当時高校3年の元木だった。指導する育英大学の柳川監督も驚くほど運動神経が悪いという。レスリングは不器用な自分でも勝つ方法があるのが魅力だと語った。元木が目指したのは藤波のような多彩な技ではなく、得意技を極めることだった。それがアゼルバイジャンのハジ・アリエフ選手が生み出した技「アリエフ」。片手で相手の頭を押し下げることで攻撃のチャンスを生み出す。腕が長く、手が大きい元木は離れた位置からでも相手の頭に手をかけて抑えることができた。相手の視線が下がり、下がった反動で上半身が浮き上がる。その瞬間にタックルのチャンスが生まれるという。所属する育英大学レスリング部は創部してからわずか6年だが、最新技術を取り入れることでスピードやパワーに頼らない戦い方を模索している。参考になりそうな画像をグループチャットでシェア。選手たちは練習中でも躊躇なく手を止めてスマホを覗き込む。これまでのレスリングの現場では見られなかった光景だ。元木がマットの上での試行錯誤を書き留めたノートは大学時代だけで20冊以上となった。

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ハジ・アリエフパリオリンピック全国高等学校総合体育大会群馬県育英大学

ことし3月、藤波朱理が育英大学に出稽古にやって来た。階級が2つ上の元木から本番形式のスパーリングを申し出た。互角の攻防が続く中、元木は磨き続けた技「アリエフ」からタックルを決めた。その後、2人はスパーリングの内容を振り返った。

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育英大学

ことし4月、元木はキルギスで行われたアジア選手権に出場。予選から1ポイントも奪われず決勝に進出。相手は地元の英雄アイスルー・ティニベコワだった。序盤から積極的にアリエフを仕掛けるがポイントを奪えない。タックルに行ったところを返され6-9で敗れた。この大会でわかったのは海外勢が日本対策を入念にしていることだった。須崎優衣は初戦で苦戦、57キロ級の櫻井つぐみは決勝で初対戦の中国選手に敗れた。

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アイスルー・ティニベコワキルギスレスリングアジア選手権櫻井つぐみ須崎優衣
76キロ級 鏡優翔

長い近代オリンピックの歴史において1つの大会で1つの国や地域がレスリングの全階級を制覇したことはない。女子は2004年のアテネ大会から正式種目となり、日本は金メダルの6割以上を獲得してきたが、6階級中4つが最多。最重量級は金メダルがなく、フィジカルの差を見せつけられてきた。パリ五輪でその偉業に挑むのが鏡優翔。この階級で長く活躍した浜口京子さんは「大きな海外の選手にタックルで勝つのはすごくリスクがある」と語るが、鏡はタックルで海外勢に挑んでいる。去年の世界選手権では全ポイントの7割をタックル起点で奪い、日本選手としては20年ぶりとなる最重量級優勝を果たした。鏡は自分より体重が軽い男子選手を相手に練習。より俊敏な選手を相手に足元に飛び込むタックルを繰り返した。鏡のタックルを体重が20キロ以上軽い藤波のタックルと映像で比較した。鏡はどんなにきつくても「かわいい」の掛け声を繰り返す。

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アテネオリンピックレスリング世界選手権 2023ロンドンオリンピック北京オリンピック
レスリング女子 日本代表

新世代のUpdateは五輪本番まで続いている。57キロ級代表・櫻井つぐみは「自分のレスリングスタイルをもっと高めていきたい」、63キロ級代表・尾崎野乃香は「カッコいい攻めるレスリングをしたい」、50キロ級代表・須崎優衣は「頂点の頂点まで極めたい」などと語った。アジア選手権の決勝で敗れた62キロ級代表・元木咲良はその試合映像を何度も見返していた。「弱かったり駄目だった過去の自分も乗り越えていきたい」などと語った。53キロ級代表・藤波朱理は出稽古を重ねながら多彩な技の精度を高めている。「本当のゴールはない。まだまだ強くなりたい」などと語った。

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パリオリンピックレスリングアジア選手権
(エンディング)
エンディング

体ひとつでいかに相手を組み倒すか。まもなくレスリングの歴史が動く。

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