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記録的な高値となった今年の新米。恩恵を受けるはずの生産者からも戸惑いの声があがっている。コメの価格はこの2年で異例の上昇。2倍以上となり家計を直撃している。増産という農政の大転換を掲げた国。それを担うコメ対策チームの舞台裏を記録した。見えてきたのは日本の農政が積み残してきた課題。
首都圏のスーパーでは続々と新米が入荷されている。価格は税抜きで4000円台後半。中には5000円を超えるものも。コメの生産地・旭川で価格高騰の一幕を記録していた。3月、農家の元を訪れたのはJAあさひかわ。秋に向けて提示する価格の水準を探り始めていた。去年、北海道のJAグループが示した概算金は主力銘柄で60kgあたり1万6500円。店頭価格にすると2000円代前半の水準だった。しかし民間の業者が更に高い金額を提示したため集荷律が例年の1割を下回る事態となった。一方、JAと競合する民間業者。相場の動向に神経をとがらせていた。大規模農家の多い北海道の平均的生産コストは玄米60kgあたり1万2000円あまり。生産者の多くが20000円で買い取ってもらえれば十分だが決めきれずにいた。背景にはコメの流通に起きていた異変。これまでコメの取り引きは地元業者が中心だったが全国から商談を持ちかけられているという。商談相手の多くがコメを確保できるか不安を抱えている。概算金が決まる8月、北海道のJAグループが示したのは2万9000円。去年より7割位上引きあげられた。これを受け競合する民間業者は3万円を超える金額を提示。店頭価格が4000円代後半となる水準。JAの概算金は各地で異例の高値となった。コメ不足の不安が連鎖したことで新米の価格が暴投している。
令和のコメ騒動とも言われる混乱をめぐり8月、農林水産省は異例の謝罪を行った。価格高騰の要員にコメ不足があったことを初めて認めた。政策の不備を突きつけられた農林水産省。コメ対策チームにカメラが入った。判明したのは2年間で76万トンのコメが不足していた現実。これまでの農政の常識に囚われていたことが一因だった。日本のコメの消費量は食生活の変化から減少に転じコメ余りの時代となった。そこで採用されたのは減反政策。本格的に始まったのは1978年。農家かあらは収入が減ると反発があった。生産の抑制を迫られた産地は質の向上を図ることに活路を見出そうとしてきた。生産を抑える仕組みはコメの価格を維持するため形を変えながら続いている。これまで綱渡りで続けられてきたが今回、限界が露わになった。インバウンドなどの影響で需要が想定外に増加。さらに生産の現場でも異変が生じている。質の向上に活路を見出してきた日本のコメ作りは猛暑により岐路に立たされている。出荷できないコメが増え生産量が目切りしている。農林水産省の検証の結果、コメ全体で2年間に16万トンが目減りし生産の不足につながったと指摘する。産地に対して暑さに強い品種への切り替えを促しているが生産者から戸惑いの声もあがっている。需給の動向を見誤った農林水産省。対策チームは農業関係者への説明に追われている。先月、農林水産省はコメの需要見通しの算出方法をインバウンドの動向などを含める形に見直した。専門家は需要の減少を前提にした政策の副作用を指摘する。かつて日本の単位面積あたりの収穫量は世界第3位だった。しかし今、その順位は15位まで後退した。生産性の面で世界に遅れを取るようになった。
8月、国はコメ政策を大きく転換すると打ち出した。コメを増産し需給の逼迫に柔軟に対応できるようにすることで価格安定につなげる狙い。これまで示された目安に従って生産量を抑えてきた農業法人。複雑な心境を口にした。増産を目指すのであれば生産性向上につながる支援を国も強化してほしいという要望が伝えられた。コメの生産性を高めるため各地で課題となっている大区画化。もう1つが新たな技術への支援。農林水産省は生産性向上につながる分野に重点的に予算を振り分けていく方針。しかし国が打ち出した増産への方針転換には懸念の声もあがっている。農林族議員の藤木氏は小規模農家の立場も考慮するよう訴えている。藤木氏の元には補助金のゆくえを懸念する声も寄せられている。国は生産者が主食用米ではなく大豆などに転作することに対して補助金を支給している。ずいでん活用の直接支払交付金は3000億円規模にのぼりコメの生産を抑え価格維持の手段となってきた。また転作に対する補助金を収入の支えにしている生産者も少なくないのも現実。そして増産を進めた先にコメ余りが起こるのではの不安の声もあがっている。農林水産省は需要に応じた増産と説明している。輸出などで需要も拡大するとしているが実現可能なのか道筋は不透明。
コメは食料安全保障上、最も重要な作物。しかし上記的に見るとコメ生産の先行きは不透明。2040年には生産者の数が現在の半分以下に減少。団体によれば国内で最大限生産しても需要を満たせない恐れがあるとしている。今、効果的な手を打たなければ経営が成り立たなくなると大手コメ卸の会社では危機感を強めている。コメ卸が2年前に立ち上げたのが新規の大規模生産者を育成する会社。社員として給料を支払いながら学んでもらう。社員には4年をめどに独立を促す。その際、農地の紹介や高額な機械もレンタル。生産したコメの販売も支援する。こうして安定した経営ができる大規模生産者を育てる。脳海外の人を中心に応募があり2年で6人が入社した。コメ農家の赤字を防ぎ生産減少を食い止めようという模索も始まっている。鳥取県のJAでは概算金を見直し独自の方法を始めた。それは生産費払い。ポイントは生産コストを算出すること。従来の概算金は市場価格に影響され農家は赤字に陥ることも少なくなかった。一方、生産費払いはかかったコストを保証する仕組みになっているため農家の経営が安定する。今年、生産費として支払われるのは60kgあたり2万2000円。鳥取県は作付面積が小さくなるほど生産コストが増産する。生産者の8割以上が1ha未満。その規模の農家が続けられる水準に設定した。大規模生産者にもメリットがある。低いコストで生産が可能な大規模生産者は利益が大きくなる。それは投資の余地になる。鳥取県のJAは仕組みを活用して大規模生産者に対しさらなる規模拡大を促そうとしている。導入にあたり、より高い値段をつける民間業者にコメが流れる心配があった。それでも今年の集荷見込みは去年の約2倍になる。農林水産省は2027年度から水田政策の根本的な見直しを行うとしている。農政の転換を実現し日本のコメ作りを立て直せるか問われている。令和のコメ騒動が投げかけたもう1つの課題。専門家は生産者と消費者の隔たりを受ける必要を指摘する。先月下旬、新潟県で首都圏の消費者が参加する稲刈りの体験ツアーが行われた。これまで当たり前のように口にしてきた日本の主食コメ。その未来は約束されたものではないことを混乱の混乱が突きつけている。
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