早稲田大学理工学部に通う伊東さんは早稲田大学交響楽団でコンサートミストレスを務めている。グラームスでヴァイオリンソロを務める樫本大進は国際コンクールで優勝しベルリン・フィルでは第1コンサートマスターを務めている。伊東さんは樫本さんの熱狂的なファンで小学校の時にコンサートに行った以来追いかけているという。リハーサル3日目、伊東さんは開始時間30分前に来ていた。この日はソリストたちと初めてのリハーサルである。リハーサル後にはキャンパスに戻り、夜が更けるまで引き続けた。最終日は本番と同じ大ホールでの演奏である。誰もが樫本さんに声をかけられないなか、声をかけられずにいる男性がいた。角田さんはエントリーシートに書いたのは東日本大震災が起きた時、ベルリン・フィルの方が救いの手を差し伸べたと書いている。当時高校2年生で震災の影響で所属していたジュニアオーケストラが活動中止したとき、ベルリン・フィルがチャリティコンサートを行い義援金で高校最後の演奏会が行われた。小児科医の薮崎さんは高音のメロディーを、うなぎパイの販売員の浜田さんはソリストたちの掛け合い部分に思いをのせ、夢の舞台が幕を開ける。