1933年。アドルフ・ヒトラーは首相に就任したばかりだった。ドイツ国民は民族の誇りと復興を訴えるヒトラーを熱狂的に支持した。この年に初めてダッハウ強制収容所ができ、この施設の運営を担っていたのが親衛隊だったという。ヒトラーの警備部隊として発足した親衛隊は、隊長のハインリヒ・ヒムラーの元で20万人を超える巨大組織になっていった。そんなヒムラーの右腕になっていたのがラインハルト・ハイドリヒだという。
ラインハルト・ハイドリヒはナチ党内外の反ヒトラー派200人以上を2日間で粛清した。そんなラインハルト・ハイドリヒも家庭では3人の子どもたちの良き父親だったという。ラインハルト・ハイドリヒは当初は反ユダヤ主義者ではなかったが、親衛隊に入ってから頭角を現すようになっていった。第二次世界大戦が始まると親衛隊の役割は拡大し、戦場でも活動するようになっていった。ポーランドを占領するとユダヤ人専用居住区のゲットーが作られた。さらにその後、アウシュビッツ強制収容所では毒ガスによる初めての殺害実験が成功し、絶滅収容所が増えていった。
ラインハルト・ハイドリヒは占領下のチェコの統治を任されるまでに活躍していた。しかしハイドリヒはチェコで殺されてしまい、遺体はベルリンに運ばれて盛大な国葬が行われた。ただハイドリヒが死んでもユダヤ人虐殺が止まることはなく、こうした虐殺は世界でも報じられるようになった。ただ1943年にドイツ軍はソ連軍に大敗し戦局は大きく変わっていった。敗色が濃厚になり、ヒムラーはヒトラーを見限るようになっていった。ヒトラーはヒムラーの処刑を命じて、逃げようとしたヒムラーは自殺したという。
連合国軍によって強制収容所が開放された。そのことによって親衛隊の狂気の実態が明らかになった。戦後、親衛隊員たちは連合国軍に逮捕されて戦争法廷に立たされた。多くの親衛隊員は有罪判決を受けた。そうした中でもラインハルト・ハイドリヒの妻のリナ・ハイドリヒは夫への愛情に変わりはなかった。2022年に元親衛隊員の裁判が行われて、禁固5年の判決が言い渡されたという。