大型連休中、岸田総理大臣は、フランスと南米のブラジル、パラグアイを訪問。3泊6日の強行日程を終えて、帰国の途に就いた。今回、就任後初めて南米を訪れた。このうちブラジルは中間的な立場を取るグローバルサウスの主要国で、ことしG20主要20か国の議長国を務める。首脳会談ではサミットの成功に向けて協力を確認したほか、戦略的グローバルパートナーとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化なども確認した。そして、南米で唯一、台湾と外交関係があるパラグアイでは、中国も念頭に、力による一方的な現状変更は許されないという意思を共有した。また、南米に先立って訪れたフランスではマクロン大統領と会談し、海洋進出の動きを強める中国も念頭に、自衛隊とフランス軍が共同訓練をしやすくする「円滑化協定」の締結に向け、交渉に入ることで合意した。今回の南米訪問には、中国の動向を背景に、グローバルサウスの国々を民主主義陣営の側に引き寄せるねらいがあった。ある政府関係者は「経済的な結び付きが強い中国との関係を気にする国に配慮して、名指しで中国を批判するのは避けた」と、難しい交渉だったことを明かす一方で、「われわれの側への理解は一定程度深まった」と成果を強調していた。ただ政府内には「中国やロシアに先んじて、日本が影響力を強めるのは容易ではない」という見方があるのも事実。岸田総理大臣が目指す分断から協調へと世界を導くには、戦略的で粘り強い外交努力の積み重ねが求められる。