ゼネラル・モーターズ、フォード、ステランティスのビッグ3で史上初の同時ストライキが続いている。組合側は大幅な賃上げに加え、雇用の保障などを強く訴えているが背景には何があるのか。現地を緊急取材した。アメリカの自動車産業の中心地・デトロイト、GMの本社前には異様な光景が広がっていた。全米自動車労働組合が待遇改善を求めデモ行進を行い、15日に始まったストライキにあわせ、決起集会を開いていた。デモ隊を率いるUAWのショーン・フェイン会長はビッグ3の経営陣を“敵”と呼ぶ強硬派として知られている。UAWとビッグ3は賃金などを定める労働協約を4年毎に改定して、改定の年にあたる今年、交渉を続けてきたが期限の14日までに妥結に至らず、フェイン会長は史上初の3社同時ストに踏み切った。UAWによると前回の契約以降ビッグ3のCEOの報酬は40%増えたが労働者の昇給は6%増にとどまっていると主張、今後4年間で36%の賃上げを要求している。一方、組合側の要求をそのままのむと人件費は2倍以上になるとフォードは指摘し対立している。また、フォードの工場前では従業員が24時間体制で抗議活動を行い支援を呼びかけていた。工場の向かい側にはUAWの支部があり、幹部のマイク・スミス副会長は父親もビッグ3の自動車工場で勤務していたという。支部には長引くストライキで苦しくなる労働者の生活を支えようと、地元の支援者や企業から提供された日用品などが並んでいた。この工場では現在3300人がストライキに参加していて、スト中は組合から手当が支給されるがその額は給与の半分以下だ。労働組合は給与以外に懸念していることがある。北米国際自動車ショーの主役はEVだった。アメリカで本格化するEV時代への転換、部品数が少ないEVの普及でUAWは仕事が失われる危機感を強めている。一方、EV化を巡り厳しい競争を強いられているビッグ3にとって、生産コストの上昇に繋がる賃上げは難しいと専門家は指摘している。このまま3社のストが10日間続くと56億ドルの経済損失が生じるとの試算もあり、専門家はストライキの終息を見通すのは極めて困難だと指摘する。