1969年、人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の宇宙からの中継は地球全体を大きな興奮で包んだ。半世紀を経て、アメリカは再び人類を月へ送る「アルテミス計画」を始動させた。日本やスペインなどの31カ国が参加し、月に宇宙飛行士が長期滞在して人類が実際に暮らすための研究や開発が計画されている。日本の宇宙ベンチャー「ispace」が掲げる「ムーンバレー構想」では、2040年代には月に約1000人が居住し、年間1万人が訪れることを想定し、月に構築したインフラを活用して地球に住む人々の生活を支える未来を描いている。立命館大学宇宙地球探査研究センターの佐伯センター長は「月の氷資源が注目され、月に早く行く理由ができたことが競走を加速させている」と話した。当初月には水がないとされていたが、最新の研究では太陽の光が届かない場所に高い確率で水が存在するとみられている。月で水を確保できれば水素と酸素が作れるため、月で長期滞在が可能になる。水素をロケットの燃料にして補充することも可能となり、太陽系進出へのコストを大幅に下げることができるという。「氷が取れるところは非常に狭い領域に固まっていて、限られたスペースの取り合いになるんじゃないかと思う」と佐伯氏は話した。