1983年3月7日、バルカンブルガリア航空013便で起きた事件。客室乗務員はヴァレンティーナ1人だけだった。013便はブルガリア・ソフィアからヴァルナに向かう人気の路線だった。スタレフ副操縦士が機長席に座りラロフ機長が操縦をチェックしていた。午後6時15分すぎ、刃物を持った男たちが機内を制圧しウィーンに向かうことを要求した。犯人に指名された乗客がハイジャック犯が4人にいる、人質をとってウィーンに行けと要求しているとスタレフ副操縦士は要に伝え、スタレフ副操縦士は要求に従うと伝えるよう言った。しかし逆方向に900キロ近く離れたウィーンに行くのは不可能だった。スタレフ副操縦士はラロフ機長に操縦を頼み、犯人との交渉に向かうことにした。残っている燃料で飛べる場所を探しイスタンブールに向かうことを交渉のカードにしたが犯人は応じず、一旦交渉を打ち切った。この当時、東ヨーロッパの大部分はソ連の衛星国で、西側の資本主義社会に憧れた人たちの脱出が相次いでいた。犯人たちの目的は西側への亡命だった。スタレフ副操縦士は管制室に支援を要請した。首都ソフィアではハイジャック対策室が立ち上がり、ヴァルナに向かわせることを決断した。空港に近づけば嘘をついていることが犯人たちにバレる。飛行時間をウィーンまでの所要時間と合わせるため黒海を一周させることを決め、パイロットに指令が伝えられた。スタレフ副操縦士はヴァルナとわからないよう街を停電させることを提案し、管制室に伝えられた。計画が進められ午後7時半に街は闇に飲まれた。飛行機は着陸態勢に入り、対策室では機内の犯人を強襲する計画を立てた。犯人たちはオーストリアの税関員をここに連れてくるよう要求した。対策室はドイツ語ができる人間を探し、国境警察に扮した2人を派遣したが制服の違和感ですぐに見破られた。