ロシアからの軍事侵攻を受けるウクライナの国土防衛のための支援策を協議しているNATOでは首脳会議が開かれるなかでアメリカ製のF16戦闘機がこの夏、初めてウクライナで運用が開始されることが発表された。ウクライナの首都・キーウでは今週、小児病院が攻撃を受け犠牲と被害の大きさに衝撃が広がっているが、F16戦闘機の運用が始まることで、こうしたロシアからの攻撃を少しでも食い止めることにつながるのか注目されている。まずこれらのF16戦闘機の到来をウクライナが待ち望んできたことは間違いない。ロシアから発射され、ウクライナに飛来してくるミサイルや、ウクライナに飛んできて空爆を行うロシアの戦闘機を撃ち落とすことが期待されているからだ。つまりウクライナの防空能力が高まることが期待されている。今回のアメリカとオランダ、デンマークの3カ国の首脳の共同声明では安全を理由に詳細は明らかにできないとしながらも供与されるF16戦闘機はすでに移送手続きの途中にあり、ウクライナでこの夏に運用が開始されるとしている。その数について今年1月の時点でオランダは少なくとも18機、デンマークは19機を供与すると表明していた。しかし運用開始は当初の見通しよりかなり遅れたことも事実。去年1月ごろにはウクライナがF16戦闘機の提供を求め始めていた。その議論が出始めていたさなかの去年1月30日にバイデン大統領が記者団からF16戦闘機の供与を検討しているのかと聞かれ「NO」と答える場面もあった。ただ5月になるとバイデン大統領はG7サミット出席のために訪れていた広島でヨーロッパの同盟国によるF16戦闘機の供与を容認する立場を表明した。その後2023年の秋ごろには運用が始まるとの見通しも語られていた。しかし結局最初の運用が始まるのはこの夏と見込まれていいる。このように時間がかかった理由にはウクライナ軍のパイロットの訓練が言葉の壁もあり簡単には進まなかったことなどが指摘されているが、西側からの兵器の供与がなかなかウクライナの期待するようなスピードで進んでいないことを象徴しているようでもある。こうしたなかで供与されるF16戦闘機の数にしても十分ではないとウクライナ側は主張している。ゼレンスキー大統領は訪問先のワシントンで行った演説で「128機ないとロシア空軍に対抗できない」と述べた。しかしこれまでに各国が供与するとしているのは合わせて79機にとどまっている。連日ロシア軍のミサイル攻撃にさらされるウクライナの厳しい現状。防空能力を高めることは引き続き重要な課題となっている。