米国大統領選挙の激戦州、中西部ミシガン州ディアボーンにある北米最大のイスラム教寺院。住民の半数以上を占める全米屈指のアラブ系コミュニティーは、いま緊張に包まれている。ガザなどで多くの死者が出る中、イスラエル支援の姿勢を変えない民主党政権への怒りが沸いている。アラブ系住民はもともと多様性を重視する民主党の支持者が多く、前回の大統領選挙ではイスラエル支持を鮮明にするトランプ氏への反発も加わり、バイデン氏が7割もの票を獲得。ところが去年、ガザでの戦闘が発生後、州の予備選挙で10万人以上の民主党支持者がバイデン氏に抗議の票を突きつける異例の事態が起きた。さらに8月ハリス氏は集会でガザでの戦闘に抗議する行為に対し、突き放すかのように発言を制した。民主党支持者の中から「ハリスを下ろせ」という運動を始める人まで現れた。ハリス氏に対しガザでの恒久的な停戦などを約束すれば支援すると表明したものの、無視されたとして、第三党への投票を呼びかけている。前回の選挙でミシガン州を制したバイデン氏とトランプ氏の差は15万票。アラブ系の有権者は20万人以上いるとされていて、接戦となっている今回の勝敗の行方を左右しかねない。ミシガン州の世論調査などを行っているミシガン州立大学・ヌーラセディーク准教授は「まだ投票先を決めかねているアラブ系住民は多いので、ハリス陣営や政権が適切なメッセージを出せれば、自分たちに有利な影響を与えられる」。最新の世論調査でミシガン州でのハリス氏のリードはわずか0.7ポイント。ハリス氏はアラブ系の人々の心を動かすメッセージを出せるのか。